Otajo -オタ女-

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Oct 01 2016

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義足モデル・GIMICOさんインタビュー 「自分は“素材”になりたいんです」

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日本で初めての義足モデルとして、写真家のレスリー・キーさんや蜷川実花さんの被写体や、さまざまなミュージック・ビデオ、ショーなどに出演しているGIMICOさん。前衛的な表現からファッションまで先鋭的な作品やイベントに登場し、注目を集める存在です。
『オタ女』ではそんなGIMICOさんにインタビューを敢行。モデルになったきっかけからそのポリシー、経営をしているブラジリアンワックス、そして最近話題となっている“欠損女子”についての見解まで語って頂きました。

ーー多感な時期に右足を切断されたということですが、今振り返ってみてどうでしょう?

GIMICOさん(以下G):中学二年生で骨肉腫、約七ヶ月の入院生活、生きるために右足切断を選び、抗がん剤で髪の毛も抜けて……って結構衝撃的なエピソードだと思うんですが、よく決断できたな、偉いな、今の自分だったらその選択できたかな、って違う人の事のように思います。人生で一番の出来事と見られがちなのですが、そんなこともなくて、14歳よりもその後の人生の方が濃いのは当たり前ですからね。忘れたいわけじゃなくて、日々の生活に追われ、普通に生きていたらだんだんと忘れてしまったというのは自然な事だと思うんです。理解されるのは難しいでしょうけれど、振り返ってみると、いい思い出といっても過言ではないくらい、遠い昔の記憶。楽しかったこともあったし、いい思い出。「時間薬」とはよく言ったものですね。

ーーその「いい思い出」とは、例えばどんなことですか?

G:大学病院の整形外科なので、大人も子どももいろいろな人間がいるという環境が面白かった。糖尿病で足が壊疽していくのを恐れたおじさんが自分で指を切断してしまったり、前科持ちの人と、その人を捕まえた元警察官がたまたま隣のベッドで入院していたり、自殺未遂を繰り返している看護師と仲良くなったり……。14歳にしてはなかなかハードな、普通に過ごしていたら経験できないことばかりでしたね。

ーーなんだかそういったご経験を掘り下げるだけでお腹いっぱいになりそうですね。

G:人生ネタ作りみたいなところが私にはあるので(笑)。いろいろな人を見るのも好きだし、いろいろな想像を巡らして「本を書けないかな」と打算的に思っていました。だから自分のことも俯瞰して見るクセがついたということはあるかもしれないですね。

ーーモデルをやってみよう、というきっかけについても教えて下さい。

G:オイプロというアンダーグラウンド専門のキャスティング会社があるんですけれど、Oi-chan(おいちゃん)がたまたま『Numero』編集長の田中杏子さんがやっていたブログで紹介されていて、それを見て「ここなら私ウケるかも」と思って、気軽な気持ちでメールしてみたんですね。連絡して、一週間後くらいにレスリー・キーの撮影でした。

ーーいきなり世界的なカメラマンとのお仕事というのも凄い話ですが、もともとショービジネスに関心があったのでしょうか?

G:もともと私はファッション系の専門学校に進学して上京してきたのですが、卒業してそういった仕事をするわけでもなく、正社員も一度して、アルバイトや派遣をたくさんして、どうしようか考えた時に、努力するのがイヤだったんですね(笑)。クリエイティブに関わりたいけれど、だれかの弟子になるとか、そういうのは違うな、と。それで、憧れてきた人の作品の素材になりたいなと思ったんです。私で、ビジュアル的なアピールポイントと言えば、義足くらいしかないかな、と(笑)。

ーーその後、蜷川実花さんとのお仕事でも素敵な姿を披露されています。

G:森美術館で『医学と芸術展』というのが決まっていて、ちょうど半年前にモデルとして活動をはじめていたので、それで声がかかったのだと思います。

ーー義足に蜷川さんの写真がプリントされている印象的な作品もありますね。

G:あれはソケット(履く部分)に写真をまず布を転写して、それを特殊な技法で固めていたんですよ。患者自身が好きな布を選んでオリジナルのソケットをつくることはよくあることで、私はそれを綺麗だと思ったのはなかったのですけれど、蜷川さんのは綺麗だな、と感心しました。

ーー実際の撮影の現場ではいかがでしたか。

G:道路の中央で撮影して、日も陰っていて時間が押していって刻一刻を争う感じになって、私も夕日が落ちてワンカットごとに一歩ずつ下がっていって、蜷川さんが地面に這いつくばるように撮影していく。ヘアメイクさんやスタイリストさんも自分の影が入り込まないように低く低くしていて。その過程がすごく「気持ちいいな」と思ったんですね。撮影して作り上げて、一つになっている感じに高揚したというか。その時に「もっと撮られてみたいな」という感情がありましたね。

ーー写真の他にも、ミュージック・ビデオやショーのお仕事もされています。求められる役割の違いとかもあると思います。

G:ジャンルは選んでないんです。私はポージングには自信があるんですけれど、いろいろな動きができるというか、義足のここが曲がって、片足でもヒール立ててみたいな、だから撮影の序盤はプレゼンみたいな感じです。ミュージック・ビデオやショーはその他の動きがあるので、どちらかが得意かといえば写真の方ですね。

ーーGIMICOさんとして、モデルとして表現したい「何か」はあるのでしょうか。

G:さっきも「素材になりたい」と話しましたが、私の場合は打算であるものを活かすというところがあって、最初からメッセージ性はないんですよね。もしかして現代アートや、福祉系のメッセージを求められがちなのかもしれないのですけれど、ちょっと困るところですね。

ーー自分は「素材」であって、何らかの意味づけをするのは写真家や演出の役割というスタンスということでしょうか。 

G:そうですね。

ーーおそらくそのスタンスと、見る側とのギャップがどうしてもあるのでは、と思いますが。

G:ほんとうにいろいろな感想を持ってもらって構わないのですけれど、私としては、曖昧にしておきたい部分があります。それは受け取る側にまかせて、想像力を掻き立てて欲しいですね。

ーーお話を伺っていると、ご自身を「素材」とおっしゃっていたり、プロフェッショナルのモデルとして極めて真っ当だな、と感じました。そんなGIMICOさんから、最近のアスリートによるファッションショーや“欠損BAR”のような存在はどのように見えているのでしょうか?

G:一言でいうと、適材適所。例えばアスリートの方々が出ているショーはメッセージがわかりやすい。スポーツってポジティブなイメージしかないし、笑顔が不可欠な感じですね。私は爽やかじゃないし笑顔少ないし、アンニュイさが売りなので(笑)。そこに私が加わったら違和感を感じると思います。“欠損BAR”の彼女たちにも最近お会いしましたが、私にはない素直さや可愛らしさ、癒やしや萌えを感じました。私って“欠損女子”の中ではかなりの劣等生だと思います(笑)。

ーーGIMICOさんはこれまで出演してきたお仕事を、どのように選んできたのか、その「違和感」にカギがあるような気がします。

G:それはすごくフラットで、自分が面白いか面白くないかですね。私より上手に出来る人がいるなら、私はやる必要がないし。義足女性の中でジャンルがあるというのはいいと思うんです。そういう意味でも適材適所ですね。

ーーもうひとつ、先ほどから「打算」という言葉もたびたび出されています。それは生きていくことに対する処世術なのか、モデルとしての見せ方としての意味なのか、どちらなのでしょう?

G:どっちもありそうな気がします。たぶん私の打算は、あまり努力してこなかったという負い目があるというか、あるものでどうにかしてきたからだという気がします。よく自分の人生を冷蔵庫の残り物で例えるんですけれど、ドアを開けてみたらいろいろ残っている中に義足もある。外に買いに行くのは面倒くさい。この中で上手いこと料理して満足している状態、と言えばいいのかな(笑)。

ーー有り合わせのもので美味しく作ってしまえる、と(笑)。

G:でも、残り物ばかり食べると飽きるし、「たまにはいいものを食べたいかな」という感じ。それが私の言っている「打算」なのかな。

ーーつまり、刺激が欲しくなってくると?

G:そうですね。あと、より美味しいものを食べるためには努力が必要なんだと、最近やっと身に沁みてわかってきました(笑)。

ーーそういう意味では、モデルの他にブラジリアンワックスのお店を経営されていることも関係しているのでしょうか?

G:開いた当時、ブラジリアンワックスが流行るか流行らないかというくらいの時期だったんです。「義足モデルでブラジリアンワックスやっているって面白いんじゃないか」って突然閃いて、思いついて二ヶ月半くらいで開いちゃった(笑)。私は根拠のない自信を大事にしているので。完全に勢いで始めた割に5年も続いているので、向いているのだと思います。お客様にも恵まれてノンストレスでやっていますが、5年もやるとさすがに飽きてしまう部分はありますね。

ーー飽きる、ということは、新しい刺激を求めていることにもつながりますね。

G:私、小学校の文集にも「スパイになりたい」とか書いていて(笑)。『キューティーハニー』のように「ある時は何々、またある時は何々、その正体は?」みたいになりたかった。だから今は主だったものがモデルとブラジリアンワックスだけど、今後ここに何かが加わって、「義足モデル+ブラジリアンワックス+○○」っていうように、どんどんよくわからない人になっていくのか。それとも突然「コレ!」ってものが出来て、すべてをやめてそっちに行くのか……。今はひらめきを待っているところ。「何者にもなりたくない」感がずっとあるから、その正体とか一生わからなくていいのかもしれません(笑)。

ーーその「何か」も興味深く楽しみにしています。ありがとうございました。

GIMICO Amputee & prosthesis model (公式サイト)
http://gimico.tokyo/ [リンク]

GIMICO de salao (GIMICOさんのブラジリアンワックスサイト)
http://gimicodesalao.com/ [リンク]

@GIMICO_gds(Twitter)
https://twitter.com/gimico_gds [リンク]

@gimico_gimico(Instagram)
https://www.instagram.com/gimico_gimico/ [リンク]

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記者プロフィール

ふじいりょう

乙女男子。2004年よりブログ『Parsleyの「添え物は添え物らしく」』を運営。ネット、メディア、カルチャー情報を中心に各媒体にいろいろ書いています。好物はホットケーキとプリンと女性ファッション誌。

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