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Mar 19 2024

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『NARUTO-ナルト-』アニメスタッフが語る原作漫画の完成度の高さ「岸本斉史先生はかなり映像的な描き方」影分身の向きは全部違うなど裏話満載インタビュー

人気アニメ『NARUTO-ナルト-』20周年を記念した展覧会「NARUTO THE GALLERY」が2023年1月31日(火)まで秋葉原UDX内のAKIBA_SQUAREにて開催中! 作品を支え続けてきたアニメスタッフの伊達勇登(だて はやと)監督と朴谷直治(ほおのきだに なおじ)プロデューサーのインタビューをお届けします。

アニメ『NARUTO-ナルト-』の放送開始20周年を記念した「NARUTO THE GALLERY」は、2015年に開催された「NARUTO-ナルト-展」以来、約7年ぶりとなる展示イベント。キャラクターの成長、仲間との絆、そして熱い“戦い”にフィーチャーし、たくさんのアニメ映像で、アニメ『NARUTO -ナルト-』の歴史を振り返ります。

また、『NARUTO-ナルト-』初の全世界キャラクター人気投票「NARUTOP99」も1月31日まで開催しています! 

そして現在放送中のTVアニメ『BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS』では1月より「サスケ烈伝」が放送中ですが、伊達監督と朴谷プロデューサーに『NARUTO -ナルト-』初期からの制作裏話など、今だからこそ聞けるお話を伺いました!

「ディテールの細かさに圧倒された」完成度の高い原作とアニメ化でのこだわり

――20周年を振り返っての想いや印象に残っているエピソードがあれば教えてください。

伊達監督:ほかのタイトルもやりつつ『NARUTO-ナルト-』の1話もやっていたので、スタートはバタバタでしたね。

――ジャンプ作品は入念に準備されてスタートするのかと思っていましたが、バタバタだったのですね。

朴谷P:でもまあ、いろんなところにプレッシャーはかけられたよね。最初、5年放送を続けろと言われて。

伊達監督:そうそう、3年くらいかな?と思っていたのが、いきなり制作発表会でぴえろの布川社長が「最低5年は続けます」とか言って、“え!そっか、そんな大きなタイトルだったんだ”と思ったところからスタートでした(笑)。

――最初に原作を読まれたときの印象はいかがでしたか?

伊達監督:まず最初に、アニメ化の依頼をいただく数か月前に本屋で平積みになっている『NARUTO-ナルト-』を発見しまして。「ああ、今これ売れてるんだろうな」とパラパラっと見て、「アニメ化したら大変そう、誰が担当するんだろう」と思っていたんです。

朴谷P:特に1巻目を見ると大変そうだよね。背景も細かいし。

伊達監督:「こんな背景細かいの誰が描くんだろう?どこかでアニメ化するんだろうな」とは思っていたら、自分だったっていう。ちょっとビックリでした(笑)。

――原作をご覧になって「細かいな!」という印象はあったんですね。

伊達監督:もう岸本斉史先生の描き込みがとにかくすごかったですから。それとデッサン力。これはアニメでどこまで出来るんだろう、と思いながら。特に岸本先生の描かれる手や足とか、ディテールの細かさに圧倒されて……。「これはアニメでもやらなきゃいけないのかなぁ」と、もうサンダルを靴にしちゃえ!とか最初は設定を変えようと思ったくらい(笑)。
そういう意味では、当初、岸本先生の足の描き方はアニメで出来るだけ伝わるように、とにかくフィルムを細かく見ながら「ここ指の力が入ってないよ!」とチェックしていましたね。

――『NARUTO-ナルト-』は原作が見開きを使ったカットなど、カメラワークや演出が映画のような映像的な印象を受けますが、そのあたりはどう感じられましたか?

伊達監督:『AKIRA(アキラ)』の大友克洋さんと同じように映像を勉強されていらっしゃるので、このままでも絵コンテになるんじゃないの?と思えるくらいのカット割りをされている。あとは、本来映像表現の中での法則性で考えると、漫画では飛ばしてしまっている部分をアニメでは補完しなければいけないので、そういうところで若干使えない絵柄が出てきちゃったりするんですけど、『NARUTO-ナルト-』の場合は基本的にほぼ使える絵柄で、コンテになるくらい完成度が高かったです。

朴谷P:確かに、原作を見ながら絵コンテ直してたもんね(笑)。

――漫画をアニメ化する上で、それはやはり珍しいことなんですか?

伊達監督:僕はその前のタイトルくらいで、原作のコマは見るんですけど、映像表現としての規則性の中では使えないというパターンを経験していて。「反対側を見たいんだけど、この先生、反対側を描いてくれていない!」という場合もあって。そういう意味では、岸本先生はかなり映像的な漫画の描かれた方をされている漫画家さんという印象がとても強かったです。

――原作からの細かなディテールにこだわれたというお話もありましたが、アニメ『NARUTO-ナルト-』と言えば西尾鉄也さんの作画というイメージもあります。

伊達監督:西尾さんの絵が意外と簡単に描けるような雰囲気で描いてあるんですよ。スタートのときに、キャラ表を見せて集まってきた下請け会社さんたちに、なんとなく絵が楽そうだと思ってやってきた人たちがいて(笑)。描いてもらったら「これじゃ使えないよ」と。

朴谷P:「いや、大変すぎてやれません」と言ってきた会社もあるくらい。

――大変すぎて、というのはどのような部分で?

朴谷P:線が多い。

伊達監督:あと、俺がアクションに際して、「止めでごまかしてくれるな」と言ったからね。それを最低限の決め事にしちゃったので。アニメだとよくスライドだけで見せていくようなシチュエーションの中でも、「スライドはしてもいいよ。でもせめてゆっくりでも髪揺れがあったり、止め絵の紙芝居ではなくて、アクションの中では全部動くものにしてね」とスタートで決めてしまったので、それもみんなの大変さを俺が助長したんだろうな(笑)。

――でも『NARUTO-ナルト-』は本当にアクションシーンが動くし素晴らしいですよね。

伊達監督:いや、そんなことないよ。アニメーターの若林さんとかが勝手に大変にしただけだよ(笑)。

朴谷P:でも良い作画の話数は、それができるスタッフにきちんと振っているからね。

伊達監督:大変なんですよ、そういう話数を作るのも。彼らのためにスケジュールを空けなきゃいけないので、先行してシナリオを上げて、前倒しで作画に入れるようなスケジュール組みからスタートするので、朴谷くんが一番大変だったと思います(笑)。

朴谷P:神話数を作れ!みたいに頼んで(笑)。

伊達監督:でもそうなると、制作現場は納品までのスケジュールが他の話数と被ってしまうわけで、オーバーラップしてドッタバタした大騒ぎだったよね。でも、作っているとやっぱりそれが楽しいんだよね、なんかバタバタしている現場が。

朴谷P:でもアクションシーンより、影分身のシーンのほうが大変だったんじゃないの(笑)?

伊達監督:影分身は大変だったね。二度と描かせたくない(笑)。

朴谷P:絶対にコピペできないように全部角度変えているから。

伊達監督:影分身1000人って言うじゃないですか。作画を見ていただければわかりますけど、1500~1600人描かないと、あの画面を埋めるだけの数にならないんですよ。それが全部向いている方向が違うので。

朴谷P:第1話は特に描かせたよね。

伊達監督:知り合いの原画マンに電話を入れて「ごめん!影分身のところ3カットだけやって!」とかお願いして。後で怒られたよ、「1枚トレースするのに3日かかりました」とか言って(笑)。

朴谷P:あれをよく3日で終わったよ(笑)。

――『NARUTO-ナルト-』らしさや、 作る上で心がけていたことは?

伊達監督:とにかく原作を追い越さないようにするのに必死でした。最後まで、ギリギリまで粘った(笑)。話数によっては、怒られたけどコンテを2本上げてもらったやつを3本に分けて(笑)。とにかく1話数でも延ばせるものは延ばしたい!って。スタートは原作の3話数分を1週間でオンエアしていたんですよ。それが途中から2.5話分になり……。

朴谷P:最後は2話分だったね(笑)。

伊達監督:それくらいの原作の使い方。でも、それだとどうしても追いつく。2話分(連載2週分)じゃ全然足りないし、間を埋めなきゃいけない。とにかく露骨にはならない程度に膨らましたいなと思いながらも、もう無理!と思いながら(笑)。

朴谷P:平均すると連載2週分でアニメ1話分を作っていたから、原作は700話だけど、アニメは半分くらいがオリジナルになっているんですよね。

伊達監督:10何年もやっていると過去の映像が残っているし、ちょっと過去を忘れている人たちのために、そういう映像を少しずつ入れ込んで行ったので、少しは楽だったのかもしれませんが……(笑)。
それでも、放送開始当初に、「もうデジタル放送になるんだから、16:9でスタートさせてよ」と言ったにも関わらず、「テレビ局の各社でゴールデン枠はまだ4:3です」とか言われて。16:9で作らせてくれていればどれだけ楽だったか! 途中に前の話数の作画を持ってきて、また新たに16:9にリライトしていたりするんですよ。もう大変だったよね(笑)。最初から16:9で作って両側切ってくれていいよ!と言ったんだけどダメでした(笑)。

朴谷P:まぁ10年以上やっていると、画角も変わるわ、納品メディアも変わるわ、結構大変でしたね。「疾風伝」になったときに無理やり16:9からやったよね。

――画角以外に、20年での変化は?

伊達監督:どんどんデジタル化が進んでいく中で、『NARUTO-ナルト-』はいつまで経っても十数年前の映像のまま来ちゃったなと思いながら、他の作品を見ていましたね。手描きで頑張りつつも、カメラワークを駆使するやつも『NARUTO-ナルト-』の場合だと完全な3Dモデルをあまり作らずに、擬似的に3Dに見せるような方法で騙して(笑)。森の中だって3Dに見えて3Dじゃないんですからね。完全に疑似3D空間に板の木を送っているだけですから。

――3Dにしなかった理由は何ですか?

伊達監督:3Dはまだ当時デジタルの過渡期で、デジタル撮影が2、3年前から始まったばかりの頃で、何が出来るか、3Dまで入り込むだけの作品群がなくて。TVシリーズで3Dを組んでいたらそれこそ大変なので、中忍試験の我愛羅とリーの回が初めて背景を3D化した最初のチャレンジでした。あとは、カカシ先生がデイダラを追いかける谷底のシーンに、3Dを組めないかやりだしたのが2回目くらいかな。
後半は徐々にデジタル撮影のチームも少しずつ3Dのことを勉強しなきゃいけない、と3Dモデルをモデリングしてもらって。白ゼツの群衆は3D空間の中で動けるようなものにしよう、と3Dの勉強をしながらやっていました。
第四次忍界大戦の我愛羅の演説のシーンは忍の群衆も3Dを組んで、カメラをぶん回してと大々的にやった回ですね。

朴谷P:今の技術だったらもっとキレイに出来るんだろうね。

伊達監督:ね! 当時はレンダリング(画像を生成)するのもすごい時間がかかって……。全部3Dモデルを配置して細かく動かしていたら膨大なレンダリング時間になる。

――時間が足りなくて放送に間に合わなくなってしまいますよね。

伊達監督:だから、TVシリーズでやるにはある程度小さく20人くらいのブロックで何パターンか作ったものを、パズルのようにはめ込んでいってレンダリング軽くしましょう、というところから手探りで始めて。全部並べていたら間に合わない!ということが途中で発覚し、別の方法を……みたいな、もう実験ですよ(笑)。まだオペレーターが何をどうやればいいか、わかっていなくて。

――では、20周年記念の「NARUTO THE GALLERY」で楽しみなところを教えてください。

朴谷P:映像もそうだけど、木ノ葉隠れの里のジオラマの完成が楽しみだよね。どこに何があるのか、見たい。

伊達監督:やっと出した設定資料集と照らし合わせて見たいよね(笑)。どれだけ忠実に出来上がっているのか。ナルトの家だけはすぐにわかるからな。
若手のクリエイターさんが作った映像は個々の個性があって、楽しんで作っていただけたならいいんじゃないかなと思っています。

朴谷P:今の人達は想像力が高くなっているから、こういう風に入っていくんだ!と思いますよね。オープニングやエンディングで僕らもやっていたので、そういうのを見て自分なりに考えるんだろうね。すごいです。

伊達監督:展示用にサインも書きました。初めて絵も添えちゃった(笑)! さすがに西尾さんたちと並ぶと、絶対に絵を描いてくるじゃん?

朴谷P:だけど西尾さんの絵と並びたくないでしょ(笑)?

伊達監督:一応14年間くらい描いてきたので、少しは似るかなって。ナルトを描いています。絵コンテのやつみたいな絵です(笑)。

朴谷P:伊達さんの絵は、ひと目でわかるよね。

――最後にファンの皆さんにメッセージをお願いします。

伊達監督:あっという間の20年。そういう意味では、僕らは駆け足で過ぎてしまった感があるんですけど、最近ぴえろのYouTubeでも過去のTVシリーズから一部を流してくれて見れたりするので、物語の最後を知った上でまた振り返ってもらって、もう1回僕らが映像に込めたものが伝わるといいな、というのがあります。

朴谷P:僕も20年の内の15年間『NARUTO-ナルト-』に関わってきて、大変なことも楽しいこともあったけど、あの映像をもう1回みんなに観てもらって、それこそ『NARUTO-ナルト-』のアニメで育った新しい子たちがこの先また『NARUTO-ナルト-』を一から作って見せてくれると嬉しいなと思います。

――ありがとうございました、これからも楽しみにしています!

ナルト役・竹内順子さん、サスケ役・杉山紀彰さんのインタビューはコチラ↓
『NARUTO-ナルト-』20年でパートナーへ成長&第七班の絆 竹内順子・杉山紀彰インタビュー「少年編に戻った映画をやりたい!」と願望も!
https://otajo.jp/112728

【開催概要】
◆イベント名 :アニメ『NARUTO-ナルト-』20周年記念​ NARUTO THE GALLERY
◆会期    :開催中~2023年1月31日(火) 10:00~20:00(最終入場19:30)
◆会場    :AKIBA_SQUARE (秋葉原UDX内)
◆チケット  :一般入場券
販売期間:2022年9月6日(火)18:00~2023年1月31日(火)18:30
料金:中学生以上2,400円(税込)、小学生1,300円(税込) ※未就学児無料
◆主催    :NARUTO THE GALLERY実行委員会 
◆公式サイト :https://naruto-20th.jp/gallery/
◆公式Twitter :@naruto_20th
<公式Twitter> @NARUTOtoBORUTO
(推奨ハッシュタグ:#NARUTO20th #NARUTO #ナルト #BORUTO #ボルト)

(C)岸本斉史 スコット/集英社・テレビ東京・ぴえろ
(C) NARUTO THE LIVE実行委員会
(C)NARUTO THE GALLERY実行委員会

「NARUTOP99」
【投票期間】2022年12月17日(土)~2023年1月31日(火)
【投票結果発表時期】2023年4月頃 ※「NARUTOP99」特設サイト上で発表
【投票資格】誰でも参加可能
【投票形式】オンライン投票
【投票条件】1日1投票
特設サイト: https://narutop99.naruto-official.com[リンク]
公式Twitter: https://twitter.com/NARUTO_kousiki
推奨ハッシュタグ: #NARUTOP99

TVアニメ『BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS』(テレビ東京系にて毎週日曜夕方5:30~)内にて2023年1月より「サスケ烈伝」放送中!

「アニメ『NARUTO-ナルト-』20周年記念 NARUTO THE LIVE」2023年9月2日(土)・3日(日)幕張メッセ イベントホールにて開催!

※Otajoとガジェット通信は姉妹サイトです。

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