“北欧女子”漫画家オーサ・イェークストロムさんインタビュー 「ストーリーが面白ければ日本人は外国人のものも読んでくれる」
ブログ『北欧女子が見つけた日本の不思議』がアメーバブログの総合ランキング1位になり、2015年3月には『北欧女子オーサが見つけた日本の不思議』(KADOKAWA)を刊行し、日本での漫画家デビューを果たしたスウェーデン人のオーサ・イェークストロムさん。2015年9月18日には早くもその第二弾が刊行されます。
※オタクになったエピソードも! 『北欧女子オーサが見つけた日本の不思議』早くも2巻が刊行
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『オタ女』では、2011年に来日して日本語もお上手なオーサさんにインタビュー。一番好きなアニメという『少女革命ウテナ』をはじめとする日本のアニメや漫画についてや、スウェーデンと日本の違い、これから挑戦してみたいことまで、お話をお聞きすることができました。
ーーオーサさんが日本で漫画家としてデビューして、早くも2巻が刊行されます。まずは、デビューする前と後で一番変わったことは何か教えて下さい。
オーサさん(以下O):一年前は、私が日本でデビューすると言っても誰も信じなかったと思いますね。だから、出版することになってみんなびっくりしましたね。「日本で本当に外国人も漫画家になれるんだ」って(笑)。日本人の読者はストーリーが面白ければ、作者が外国人のものでも、読んでくれてすごいな、と思いました。
ーー1巻が出版されたのが3月。2巻が9月と、かなり短いスパンでの刊行となりました。今のお気持ちは?
O:締切ギリギリで出来て良かったです(笑)。やっぱりタブレットでデジタルでやっているので、つい描き込んでしまいますし、そんなに絵が上手でないから、描くのに時間がかかってしまったり……。
ーーいや、十分キュートな絵柄だと思いますよ! そんなオーサさんはブログでも発信されていますが、やってみようというきっかけは何だったのでしょう?
O:実は今のブログの前に、別のブログがあって、それはもともと専門学校の課題でした。半年間毎日更新しなければいけなかったので、毎日四コマ漫画を描くことになったんです。
ーーそれが1巻に登場する「ジャップダ」という名前のブログ?
O:そうです。人種差別的なタイトルの(笑)。自分ではかっこいい名前だと思っていたんですけれど……。
ーー知らなかったのなら仕方ないですよね。
O:知りませんでした。すいません……。
ーーあと、個人的に1巻の中にコミティアに出店して出版社のブースに持ち込みをする話が描かれていたのが気になったのですが。コミックマーケット(コミケ)は知名度がありますが、コミティアに出た理由を聞かせて頂ければと。
O:私も最初に出たのはコミケでした。でも、コミケはすごく大きくて……。私はオリジナルの漫画に興味があったので、一次創作オンリーのマンガのマーケットがあると知って、そこに出店してみたいな、と思いました。
ーーそのおかげで、KADOKAWAさんからの出版につながったわけですね。
O:はい。はじめての持ち込みで、ラッキーでした(笑)。
ーー今回刊行される2巻では、13歳の頃に『美少女戦士セーラームーン』と出会って、日本のアニメや漫画が好きになる話をお描きになっているんですけれど、特に『少女革命ウテナ』が一番好きな理由も教えて下さい。
O:やっぱり『セーラームーン』と同じように、主人公が強いキャラクター。男っぽくてかっこいいな、と思って好きになりました。
ーー天上ウテナのかっこよさに惹かれた?
O:ウテナ本人ですね。あと、決闘広場への音楽が不思議な歌詞とかも。それから、やっぱり日本のアニメでは一番フェミニスト的というか……。最初は弱いキャラクターだったアンシーが、最終話ではウテナを探しに世界に出るというシーンがすごいと思いました。アニメーションも好きだし、キャラクターデザインも好きです。
ーーオーサさんの『ウテナ』愛がよく伝わりました。スウェーデンにいた頃、ほかのアニメや漫画で好んで見たものを挙げるとすれば何になりますか?
O:主に読んだのは少女漫画ですね。欧米ではそういう女性向けのコミックがあんまりなかったので、魅力的に見えてたくさん読みましたね。CLAMPの作品も全部好きになりました。『東京BABYLON』や『X』とか……。高橋留美子先生のほとんど全部の作品好きでしたし、(上田美和先生の)『ピーチガール』はすごいハマってましたね。
ーー来日前から日本のアニメや漫画をたくさん見ていらっしゃったわけですけれど、日本語はどうやって覚えたのですか?
O:スウェーデンの学校では、9、10歳ぐらいから英語の勉強をしますけれど、12歳から他の言語も勉強しなくてはいけないんです。だから本当は日本語の勉強をしたかったのですけれど、その頃はコースがなくて……フランス語を7年間勉強しました。でも全く話せません(笑)。
ーーそんなオーサさんも来日して専門学校に通われて、今では日本語も話せるようになっていますが。まだ日本語で難しいところはありますか?
O:あります! やっぱり敬語はまだまだ難しいですね。使うか使わないのかどっちの方が良いのかよく分からなくて、ここは敬語を使った方が良いと思いますけれど(笑)、ちょっと難しいですね。
ーー尊敬語や謙譲語は日本人でも難しいですからね。あと、1巻に「カワイイ」という言葉がいろいろな意味で使われる、という話があって印象的でした。今でも「カワイイ」と言われて混乱することもありますか?
O:「カワイイ」に言われてもちろん嬉しくなりますけれども、スウェーデンではやっぱり「美人」「キレイ」「セクシー」というのが認められていて、「カワイイ」はそこに足りない時に使う言葉ですから。でも日本では違う意味だと分かってます。でも、未だにちょっと不思議なのが「顔がちっちゃい」ですね。褒め言葉だと分かっているので嬉しくはなりますけれど、スウェーデンでは顔のサイズはキレイかどうかに関係ありませんから。
ーー「脳みそが少ない…っていう例え?」って描かれてましたね。そういったスウェーデンと日本のギャップという意味では、2巻でヴィーガン(肉を食べず、革製品も身につけない主義)の友人が来日されて案内する話が出てきますね。
O:本当は和食のヴィーガンを食べたかったのですけれど、100%ヴィーガンの和食レストランが見つからなくて、ちょっと悲しかったです。これはスウェーデンでも同じだと思いますけれど、材料に何が入っているか成分を読むと、意外と何かしら動物が入っているものが多くてびっくりしました。でも友達には良い経験になったと思いますね。特に銭湯は本当に大好きになって、私も前より行きたくなりました。
ーー北欧というとサウナのイメージがありますが、銭湯はないものなんですね。
O:ないですね。共用のサウナがあるアパートとかありますけれど、温泉も銭湯もないですね。でも、銭湯は大好きですね。最近、とても暖かいお湯の隣に、冷たいプールがあるのを発見して。そこから入るとちょっと面白いというか、(北欧の)サウナを思い出しました。スウェーデンではサウナで体が熱くなった後で、本当に冷たい海とか雪に入ります。
ーー雪!(笑) そういった異文化の違いの面白さがあるのだと思うのですけれど、日本でも北欧に憧れがある女子がたくさんいるということはご存知ですか?
O:はい。私の友達にも二人くらいいますね。
ーー彼らを見てどう思われますか?
O:一体なぜでしょうね(笑)。やっぱり自分の国なので、どこが魅力か分からないです。あとは、スウェーデンは寒くて半年ぐらいはとても暗いですから。もちろん、スウェーデンのことが「好き」と言われるととても嬉しくなります。今、スウェーデンに7年ほど住んでいる日本人の友達は、言葉もペラペラだし、スウェーデンの全部が好きみたい。スウェーデン人より、スウェーデン人的な考え方になっています(笑)。
ーーそれは、どのような……。
O:たくさんジムに行ったり健康的に日焼けしたいとか、スウェーデン人のような行動や言動をするようになりましたね。
ーーなるほど。オーサさん自身、来日してもう長くなりますが、ご両親から「そろそろ帰国を」という話にはなりませんか?
O:だんだん諦められていますね。もちろん戻ってきて欲しいのだと思いますけれども、私のことを応援してくれていますし、もしかしたら年に2回くらい2回くらいスウェーデンに帰って来ればOKだと思います(笑)。でも、日本で漫画を出版できたことで、帰国することになっても満足して帰れます(笑)。
ーーお話を伺っていると、日本での目的はかなり達成されていますよね。
O:ですね(笑)。でも、3巻も出版したいです!
ーーおお! とはいえ、日本に長く住んでいると、だんだん生活に慣れてきて当たり前でなかったことが当たり前になってきて、ネタ探しが大変になりませんか?
O:はい、正解です(笑)。おっしゃった通り、日本の“不思議”を見なくなってしまいますね。その時は、外国人の友達に聞いた方がいいですね。でも、日本に慣れてきたのは良いことだと思っています。
ーーそれはなぜでしょう?
O:「日本には自動販売機が多いです」といったものを超えた、本当に深くて面白いネタにできるといいなぁ、と……。でもそれには、外出して人と話す必要がありますね。前に比べたら日本語で失敗することがあまり恥ずかしくならなくなりましたし。毎日失敗をするので(笑)。
ーーこれまでオーサさんの漫画では、日本の中でも東京の話が中心だと思うのですが、他の街に行ったり題材にしたりしてみたいですか?
O:出来たらいいですよね。これまで、沖縄に行くことを友達に2回誘ってもらったんですけれど、どちらも仕事で行けなくて悲しかったので、より行ってみたくなっています。
ーー“北欧女子 in 沖縄”というのも面白そうです。最後に、オーサさんの漫画を、どういう人に読んでもらいたいか、お聞かせ頂ければと思います。
O:日本人で外国人に会ったことのない人はたくさんいると思いますけれど、その人からちょっとでも興味を持ってもらえて、国や国籍が違っても、同じ冗談で笑うことができれば、お互いにもうちょっと理解できるかもしれませんね。
ーーそうなればステキだと思います。ありがとうございました!
『北欧女子オーサが見つけた日本の不思議2』刊行記念トークショー&サイン会
日時:2015年9月26日(土) 19:00~
場所:紀伊國屋書店新宿南店 7Fサザンシアターロビー
内容:19:00~ 参加者限定!トークイベント
19:40~ サイン会
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