“すっぴん風”ではなく“すっぴんを作る”!? 『FRaU』が提唱する“なりすまし美肌”とは
ここ最近、メイクのトレンドはいかに“すっぴん”に近づけるか、というポイントが軸になっている印象。ですが、講談社のライフスタイル誌『FRaU』(フラウ)2015年10月号では、“女たちよ!化粧ですっぴんを「作る」時がきた!”というコピーが踊り、「隠すが勝ち、の”なりすまし美肌”」を提唱し、有名メイキャップアーティストのメイクテクやスキンケアを紹介しています。
化粧をしていないことを指す”すっぴん”の、意味をも変えてしまうようなコピー。この意図について「いくつになっても、ありのままのすっぴんだけで勝負しようとするなんて、あまり知恵不足」と指摘。あえて素肌を隠すことを「大人の女のキモ」「色っぽく品がいい」と肯定しています。
特に、エッセイストの齋藤薫さんは、「何かが何でも美しくありたい女の生理から言って、すっぴんがブームになるのは不自然」とまで述べて”アンチすっぴん”ぶりを発揮。タレントがSNSですっぴんを晒すことでブームになったことに乗ることに物申し、「ナマっぽい素肌で人に会うのは、部屋着のまま人と向き合うが如き、大人の女としてマナー違反」と力説。一方で「本当に美しい肌はすっぴんがどうかなどどうでもよくなるほど、高次元のインパクトを持っている」として、大人に見せるナチュラルメイクで「別格のなりすましすっぴん美肌」を目指すことを提唱しています。
さらに、この「作るすっぴん」論を補強するために脳科学者・医学博士の中野信子さんを動員。「ポジティブない死とネガティブな情動は、脳にとってはどちらも意味がある」として「もう年だ」といった思考を悪者扱いすることを否定。「化粧によって見た目が変わると、その変わった記憶や鏡に映った顔がフィードバックになって、脳の認知になる可能性がある」と推測し、「すっぴんが好まれるのは、女性性を適度に抑えているからだと思います。”すっぴん風メイク”は、女を使ってズルをしようと思っていません、あなたのリソースを奪う気はありませんという意思表示になります」と分析。こってりメイクよりも好感度の高いメイクを再現することを目指す意味を示しています。
テクニックとしては、ヘアメイクアーティストの千吉良恵子さんが透け感ではないナチュラルな艶美肌を構築するためにベースメイクの習慣術を指南。化粧直しの手順や最新化粧下地の使い分け方法などがあり、かなり実践的。「”なりすまし力を高める新習慣」として、水素水やコンブチャ、デトックスウォーターなども紹介されています。
全体として、ナチュラルメイク+美肌志向を“なりすましすっぴん”としている印象の今回の『FRaU』特集。コラムではかなり踏み込んだところまでアグレッシブに言及していますが、「時短ではなく、“手をかけた美容”に時流が戻りつつあります」(美容ライター・鵜飼香子さん)というのは若干「?」が残ります。いずれにしても、筆者としては“美肌”を連呼していることに対して「お前はこの誌面の『Photoshop』のヒストリーを覚えているのか?」と問いたくなったのが正直なところ。理屈ではなく、使えるテクニックを”つまみぐい”するというのが賢い読み方なのではないでしょうか。
FRaU(オフィシャルサイト)
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