小野賢章の“感情が複雑に入り混じっているような声色”に斉藤壮馬「これが今回のハサウェイなんだ」映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』インタビュー
全三部作として描かれる映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』の第1部が、いよいよ明日2021年6月11日(金)より全国ロードショー。主人公:ハサウェイ・ノアを演じる小野賢章さんと、ハサウェイと対峙する若きエースパイロット:レーン・エイムを演じる斉藤壮馬さんのインタビューをお届けします。
アムロとシャアの最後の決戦を描いた『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』公開から33年――。その世界観を色濃く引き継ぐ富野由悠季氏による小説『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』が待望の映画化。反地球連邦政府運動「マフティー」が挑む新たな戦いを縦軸に、そのリーダーであるハサウェイ・ノア、謎の美少女ギギ・アンダルシア、連邦軍大佐ケネス・スレッグの交差する運命を横軸に描きます。
ハサウェイ・ノア役の小野賢章さんとレーン・エイム役の斉藤壮馬さんに、作品とそれぞれのキャラクターについて、モビルスーツの印象などお話を伺いました。
「説明しすぎない美学を感じた」
――本作に出演が決まったときの気持ちと、小説や台本を読んでの印象をお聞かせください。
小野:ガンダム作品には『機動戦士ガンダム THE ORIGIN Ⅴ』「激突 ルウム会戦」で一度参加させていただき、その時はコロニーの住人として毒ガスで亡くなってしまう、夢を抱いていた少年という印象的な役を演じたのみだったので、今回はガンダムパイロットとして参加させていただけることになり、すごく嬉しかったですね。でも、それは一瞬で。その後はずっとプレッシャーとの闘いでした。
台本を読んで、最初は正直ちんぷんかんぷんだったんですよ。この映画の狙いなのか、そんなにわかりやすいセリフで構成されていないという面があって。ハサウェイがどういう気持ちでその言葉を言っているのかがわからず、もうちょっと細かく心情を知りたいという部分で、これはしっかりと理解しないと難しいな、と思いました。小説にはハサウェイのその時の気持ちや背景などが細かく書かれていたので、そこを1つ1つ読みながら台本にメモしたりしつつ、色々噛み砕きながら取り組んでいきました。
斉藤:ガンダムシリーズは非常に多くの方に長い間、凄まじい熱量で愛されてきた作品群なので、そこに自分が声優として関わらせていただけるとことは本当に光栄なことだと思いましたし、同時に、それだけの多くの方の想いが繋がってこの作品が今回映像化されるわけですから、自分も覚悟を持って臨まなければいけないと思いました。
同じく僕も台本を読んだときに、昨今あまりこういう作り方のアニメーション作品は少ないのではないかな?と、とても印象的でしたね。文脈や行間を感じられるような会話劇で、しかも、その言葉通りに意味を解釈することがすべてではないという、かなり複雑な人間模様が描かれていて。僕も何度か読み返して、自分の中に落とし込むのに時間はかかったのですが、脚本の段階ですでに、すごく面白くなりそうだな、という予感がありました。僕はアフレコを皆さんと一緒にほぼしなかったので、正直ここはちょっとよくわからないな、というところもあったんですけど、映像を観てしっくりきました。その塩梅がかなり絶妙で、ギリギリの説明しすぎない美学みたいなものを感じて、自分で解釈して、その解釈に責任を持っていくことが大切になりそうな作品だな、と感じたのが印象深いですね。
――小説を知っている人から見た面白さはどのようなところになりますか?
小野:小説を読んでいる方は、すごくわかりやすいというか、映像化されてとても嬉しいんじゃないかな、と思います。
斉藤:“小説の地の文通りだな、ここのセリフ!”みたいなところは結構あります。例えば、ギギが声を上げて叫んだと書いてあるシーンは、その通りの芝居をギギがしていたり、小説がお好きで待ってくださっていた方にもきっと、これが観たかったんだ! と思っていただけるようなものになっているだろうし、1度ですべてがわかるというよりは、自分の頭で考えながら何回も観たくなる作品だなと思いました。
――何度も見返して意味を探りたくなる作品になっていますよね。
斉藤:映像的にはバトルシーンやユーモラスなシーンも上手く挟まれていて、僕はすぐ何回も見返したくなりましたね。
――それぞれ演じる上で意識した点、苦労した点を教えてください。
小野:ハサウェイは、見た目から好青年な印象を持つと思うんですけど、それとは別の反地球連邦政府運動「マフティー」の顔がある。そのマフティーとしての活動に絶対の信念を持ってやっていたらいいんですけど、それも迷って悩んでいるという状態なので、なかなか難しい役どころだな、という印象は最初にありました。
その印象通り、実際に演じてみても表向きのハサウェイ・ノアとしての立ち居振る舞いと、マフティーとしての行動や、マフティーの仲間たちと一緒にいるときの言動だったり、さらにハサウェイが心で思っていることなど、結構全部がグチャグチャでバラバラで。演じていく中でも自信を持って正解を出す、ということがなかったんですけど、でもそれがハサウェイだと思っています。悩んでいるけれど、立ち止まれない、引き返せないところまで来ているから、その悩んでいる部分を見せずに突き進んでいる、という印象があるので。お芝居も自信を持って「こう言います!」というよりは、悩みながらやっていった印象ですね。
――迷いながらも、それを素直に演技としても出していくような?
小野:それはちょっとまた違っていて。悩んでいるところを見せてしまうと、それもまた違う。ハサウェイ・ノアという表向きな発言と思っていることが全然違ったりするので、その微妙なニュアンスの出し方はすごく難しかったですね。
――レーンはいかがですか?
斉藤:オーディションのときも、本番のアフレコでも同じ「若武者みたいな感じでやってください」というディレクションをいただきました。ハサウェイはハサウェイで複雑な迷いだったり揺らぎみたいなものがあるんですけど、レーン・エイムは、それよりもさらに経験が少なく、若さや青さがある。それ故に自信もある、みたいな人なのかな、とそのディレクションを受けて思いました。なので、ハサウェイとは逆に、レーンは目の前の物事に対して感情と表情と行動がマッチしていないというシーンがあまりないのかな、と思っていて。自分のほうが優れていると思っていたら、「自分のほうが優れている」と言うし、なぜだ?と思ったら「なぜだ?」と言っているので、そういう意味では、ある種ハサウェイと対象的な人物なのかなと思います。ただ、その自信の過剰さは経験の少なさということでもあると思うので、レーンは今回の第1部で1度ハサウェイと戦うことになるんですけど、その経験を通して彼がどう成長していくのかが楽しみですね。
――共演を知ったときの気持ちと、お互いの演技を見た感想を教えてください。
小野:レーンに関しては、すごい楽しそうにやってるな!という印象が強かったです(笑)。ハサウェイは相当悩んで苦しんでいるので、僕もずっと悩みながらやっていたので羨ましいなと思いました(笑)。レーンのお芝居を見て、すごく生き生きしていて、壮馬くんは本当にぴったりだと感じました。
斉藤:実は僕も最初にオーディションでハサウェイ役を受けたということもあって、ハサウェイの視点でも物語を見てみたいなと思っていたんですけど、賢章さんがおっしゃっていたように、やっぱりハサウェイの視点で見るとすごく難しくて。文章で見るとそれぞれの想像力の世界で補完されるものを、セリフとして限定していく作業ってすごく難しいことだと思うんです。でも、賢章さんの芝居もだし、声が複雑な味がするというか(笑)。
小野:闇成分がね(笑)。
斉藤:だけど、それをあまりわかりやすく出していない。先程も、迷いをそのまま出すのはちょっと違うとおっしゃっていましたけど、表立って「俺は自信があるぜ!」とか、「俺は闇深いぜ!」という芝居は選ばないところが、すごくハサウェイにマッチしているんじゃないかな、と思っていましたし、ハサウェイという人を自分はオーディションのときに掴めなかったけれど、これが今回のハサウェイなんだ、としっくりきました。
だからこそ、そこに対してまだ視野狭めなレーンがこれから先どう立ち向かっていくのかが楽しみだし、おそらく物語が進めばより戦いのシーンも増えてくると思うので、待ち遠しいなと思います。今回も掛け合いのようなシーンはありますが、よくよく聞くと、ほぼ途中までは2人で喋っていないんですよ。1人ずつ、モビルスーツの中で大きい声を出しているという、ガンダム特有の演出で(笑)。
――レーンは津田健次郎さん演じるガウマン・ノビルとの掛け合いも印象的でしたが、アフレコは別だったのですか?
斉藤:別々でした。でも、レーンってそもそも人の話を聞いていないので(笑)。掛け合いの楽しさって相手と対話できるところにあると思うんですけど、レーンは逆に人の話を聞きすぎると猪突猛進感が薄れてしまうので、もしかしたら収録が結果的に別になったことによって、そのレーンの聞いていない感じが出たのかもしれないですね。
小野:確かに。あのレーンの若さも出るしね。
斉藤:完成映像でガウマンとのやり取りを聞いて、斉藤壮馬個人としてはガウマンもカッコイイなと思いましたし、良いシーンだな、と思いました。
――小野さんは斉藤さんのレーンはぴったりだとおっしゃいましたが、お互いから見て、演じるキャラクターと似ていると感じる部分はありますか?
小野:でも、壮馬くんはあんなに自信家ではないかな(笑)。もう少し謙虚な印象はあります。津田さんから、こういうときに何て答えるといいかを教えてもらったんですけど、「声が似てます」って(笑)。
――津田さんらしいです(笑)。
斉藤:まさに、その声で言うと、先程も言ったようにハサウェイの表にはそんなに出さないけれどいろんな色彩を帯びた感情を持っていそうな声というか、賢章さんは100%真っ直ぐ!というタイプの表現よりは、いろんな感情が複雑に入り混じっているような声色ですごく好きなので、そこがハサウェイにすごくマッチしているなと思いました。
超巨大なモビルスーツ「機体から聞いたことのない音が聞こえてくる(笑)」
――ガンダムといえば、やはり毎回モビルスーツにも注目が集まります。ハサウェイの乗るΞ(クスィー)ガンダムは26m超えの巨大な機体ということで、PVと設定画が解禁されたときも反響が大きかったです。
小野:PVでも公開されているメッサーがまずカッコイイですからね。Ξガンダムを見て、これに乗るんだ!とテンションが上りました。映像として実際に動いているところを観た時は、純粋に男の子としてカッコイイ!と思いました。本当に命を賭けて戦っているので、パイロットたちはそれどころじゃないんですけど、視聴者として観ている側からすると、こんなに大きな巨体のモビルスーツがものすごいスピードで空中で戦っていると思うと、やっぱり夢があるというか、カッコイイな、と観ている側がどんどん少年に戻っていくような感覚を映画からは受けました。Ξガンダムよりもさらにレーンの乗るペーネロペーのほうがデカイもんね。
斉藤:そうですね。声優として、自分がモビルスーツに搭乗して戦うことができるというのは、すごく大きなロマンの1つだと思うので、嬉しいな、有り難いなと思いましたし、Ξガンダムの見た目もカッコイイですけど、単純に個人的な好みで、ペーネロペーの見た目がすごく好きでした。僕は小さい頃にガンプラを作っていたので、この何十分の1スケールみたいなプラモデルをいろんな角度から細かく見たくなるな、という造形がどちらのモビルスーツにもあります。デザインとしてもカッコイイし、実物というか、3次元の立体モデルを見たときも気分が高まるような造形になっていると思います。
――でもガンダムシリーズの中では、少し珍しい造形ですよね。ペーネロペーはフライト・フォームに変形するのも特徴的だなと思いました。
斉藤:変形するというのは、やはりとてつもないロマンがありますよね。ただでさえ大きいのに、その異様な感じがさらに強調されるというか。
――巨体同士が戦っているので、その迫力もすごいです。
小野:機体から聞いたことのない音が聞こえてくるもんね(笑)。
斉藤:それを大きい画面と良い音響で楽しんでほしいです。
――では、好きなモビルスーツがあれば教えてください。
小野:そこは、僕はやはりΞガンダムにします!
斉藤:僕はサザビーです! あと、ちょっと話が逸れちゃいますけど、プラモデルでいうと、僕はガンプラのSDガンダムがすごく好きで、武者ガンダムシリーズをよく作っていました。元々漫画から入ったんですけど、めっちゃデカい剣にサーフィンみたいに乗って敵を倒すキャラがいたりして(笑)、よく作っていましたね。
――映画は3部作ということで、今作は第1部で物語の序盤となりますが、今後の展開で楽しみなところを教えてください。
小野:ハサウェイがやっていることが本当に正しいのかをハサウェイ自身が悩みながら行動しているんですけど、それがどんな結末になっていくのかが気になりますし、現段階ではまだ次回作の台本をいただいていないので、映画の中で本当に小説の結末を辿るのか、僕自身も楽しみにしています。
斉藤:我々も早く次がどうなるのか知りたいです、というところが一番嘘偽りのない次への期待の表現なのかな、と思います。
――ご覧になっているファンの皆さんと、まさに同じ気持ちということですね。
小野・斉藤:そうですね!
――ありがとうございました、今後も楽しみにしています!
小野賢章さん
ヘアメイク:齋藤将志
スタイリスト:DAN
斉藤壮馬さん
ヘアメイク:紀本静香
スタイリスト:本田雄己
『閃光のハサウェイ』STORY
あざやかな閃光 新たな世界の始まり―
第二次ネオ・ジオン戦争(シャアの反乱)から 12 年。
U.C.0105——。地球連邦政府の腐敗は地球の汚染を加速させ、強制的に民間人を宇宙へと連行する非人道的な政策「人狩り」も行っていた。
そんな連邦政府高官を暗殺するという苛烈な行為で抵抗を開始したのが、反地球連邦政府運動「マフティー」だ。リーダーの名は「マフティー・ナビーユ・エリン」。その正体は、一年戦争も戦った連邦軍大佐ブライト・ノアの息子「ハサウェイ」であった。
アムロ・レイとシャア・アズナブルの理念と理想、意志を宿した戦士として道を切り拓こうとするハサウェイだが、連邦軍大佐ケネス・スレッグと謎の美少女ギギ・アンダルシアとの出会いがその運命を大きく変えていく。
『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』6月11日(金)全国ロードショー Dolby CinemaTM/ 4D 同時公開
公開劇場全館にて劇場限定版 Blu-ray、6月11日(金)より公開と同時発売!
配給:松竹ODS事業室
(C)創通・サンライズ
小説には登場しないアムロ・レイ登場!古谷徹「その後のニュータイプたちの生き様を劇場で見届けて」『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』第2弾予告公開
https://otajo.jp/98913[リンク]
※Otajoとガジェット通信は姉妹サイトです。