宇野亜喜良氏の自作セレクションからアーバンギャルドまで! 女子カルチャー好き必見の『夜想#少女』
澁澤龍彦などが紹介した幻想文学や象徴主義美術、寺山修司の『演劇実験室◎天井棧敷』の実験劇、古今東西のアンダーグラウンドカルチャーを取り上げ続けて異彩を放つ雑誌『夜想』(ステュディオ・パラボリカ)。2000年代に入って復活した後は、「ヴァンパイア」「ヴィクトリアン」といったテーマだけでなく、「ゴス」について歴史的な位置づけを与え、人形やぬいぐるみの特集を組むなど、女子カルチャーの深層を探る誌面作りがファンの心を掴んでいます。
2013年10月に発売になった最新号『夜想#少女』では、東京・浅草橋のギャラリーパラボリカ・ビスで展示を開いた作家の作品が網羅されているほか、挿絵画家・グラフィックデザイナーの宇野亜喜良さんの自作セレクションとインタビューが掲載。ほかにも、英文学者・翻訳家の若島正さんのナボコフに関するインタビューや、文芸評論家の千野帽子さんの少女小説セレクション、さらには今野裕一編集長の体験をもとにした境界性パーソナリティ障害について精神科医・岡田尊司氏の「治療」が行われるなど、多岐にわたる一冊となりました。
宇野さんのインタビューでは、60年代にブランドものではなく、女の子たちが自分たちでオリジナルの服を作り出したことを「自分たちであの美学を発見した」と表現。自身も美術を手がけた寺山作品を紐解き、「イラストをまねしてファッションが生まれる」と語るなど、スリルに満ちた内容で少女論に興味がある人にとっては必読の内容。
また、小説家の辻村深月さんとイラストレーターの今井キラさんの対談では、ロリータや少女をテーマにする上での価値やクリエイター自身の感性が相互に作用していることが垣間見え、今井さんのイラストも多数掲載されていることも合わせてファンならば押さえておきたいところ。
過去の作品だけでなく、トラウマテクノポップを標榜して刺激的な歌詞とパフォーマンスで支持されているアーバンギャルドについても、高柳カヨ子さんが小論を展開。名曲『ダブルバインド』について「いつも変わらない距離でいてくれる他人を、潜在的に希求しているのかもしれない」とあるなど、「メンヘラ」と呼ばれがちな”アーバンギャル”の心理を的確に解明しており、2013年の「少女論」として相応しい題材も扱っているのもポイントです。
ほかにも写真家・稲岡亜里子さん、画家・横田沙夜さん、人形作家・中川多理さんの作品がカラーで掲載され、資料的価値も高い今回の『夜想』。現在の少女趣味の真髄を知る上で外せない一冊といえるでしょう。
また、パラボリカ・ビスでは2013年11月29日から12月27日まで、刊行を記念した『夜想#少女展「時にうつろい、時を越える少女たち」』を開催。掲載作家の作品を観賞できるチャンスなので、こちらにも足を運んでみてはいかがでしょうか。
夜想#少女展「時にうつろい、時を越える少女たち」
会期:2013年11月29日~12月27日
時間:月~金/13:00~20:00 土日祝/12:00~19:00
料金:500円
会場:parabolica-bis(パラボリカ・ビス)
東京都台東区柳橋2-18-11http://www.yaso-peyotl.com/archives/2013/11/yaso_filles1129.html [リンク]
夜想#少女 yaso # Filles (公式サイト)
http://www.yaso-peyotl.com/archives/2013/12/yaso_filles_1.html