『乙嫁語り』コスレイヤーも魅了! ポーラ美術館『トルクメンの装身具』レポート
かつてシルクロードが通ることにより文明の交差点でもあった中央アジアのトルクメニスタン。その周辺の人々が19世紀ごろに身に着けていた装身具や民族衣装を展示する『シルクロードのよそおい トルクメンの装身具』が2017年3月3日まで神奈川県箱根のポーラ美術館で開催されています。
日本人には一見なじみの薄いトルクメニスタンの文化ですが、最近では森薫先生の『乙嫁語り』(エンターブレイン)で描かれており、作品のファンとしては是非見ておきたいところ。
ここでは、2017年1月7日に開かれた、装飾具の買い付けに携わったポーラ文化研究所の村田孝子さんと、『乙嫁語り』の衣装を忠実に再現したコスプレイヤーの祭さんとのトークイベントを通じて、その装身具の魅力をレポートします。
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トルクメニスタンの装身具はほとんどが女性用。銀や金のメッキを施し、紅玉髄や赤いガラスが埋め込まれていますが、これらは身を飾るだけでなくお守りの役割を果たしたといいます。金銀を使っていることから財産的な価値もあり、女性たちの身分を表しており、「全財産を身に着けているようなもの」(村田さん)だったといいます。
「エグメー」と呼ばれる頭飾りは、四角い飾り板と鎖や環で作られ、婚礼衣装として使われていました。5つの紅玉髄はイスラム教徒が守るべき5つの義務や5本の指といった呪術的な意味が込められています。
他に類を見ないこめかみ飾り。中には数10cmに達するものも。
耳飾りも豪奢。
首飾りは、500~600gという重さ。村田さんによると、当時の女性は結婚後に夫からプレゼントされたさまざまなものを身に着ける負担から「あまり長生きができなかった」といいます。
「ブコフ」と呼ばれる首飾りには、鎖の先に「アダムリク」と呼ばれる小さな人間像が付いているものもあります。
胸飾りは、六角形や菱形、円形のものなどが残されています。平面を十字状にあしらったものは、中央と方位を強調する意味があったといいます。
背中飾りもかなりの大きさ。中にはハート型のものもあります。
悪霊を追い払う大切な装身具だったという護符入れ。筒にはコーランの「開始の章」「王座の節」や守護祈文、魔法陣などが護符として入れていたそうです。
帽子の上から載せる飾り。
鈴の音が悪霊を追い払うという効果があるとされており、祭さんは「邪眼から身を守るという考えに魅力を感じた」と話していました。
腕輪飾り。6個の紅玉髄が埋め込まれている豪華なものもありますが、現地では8個埋め込まれたものもあったとのこと。当時は服の裾などから悪霊が入るとされており、それらを守る大切な装飾具でもありました。
1991年と1993年の2回に分けて、トルクメニスタンに訪れ、500ほどの装身具を買い付けたというポーラ研究所。近代化されていて古くからの衣装を着ている人は少なかったといいますが、空港を降りてすぐに過去を思わせる服を着た女性を見かけたそうです。
バスで移動中に見かけたという集団。ソビエト連邦時代を経て、「ヨーロッパ的な顔立ちの女性も目についた」と村田さんは話します。
花嫁の婚礼衣装を再現した様子も。「銀地に金メッキが力の証拠で、石よりも色にこだわる。赤は血の色。それが自分の身を守る」(村田さん)といいます。
独特の様式美があるトルクメンの装身具。トークセッションで祭さんは「人の愛情や自分の子どもに無事でいてほしいというのが根底にあるのが魅力」と語り、とりわけ豪華な金メッキを施す「テケ族の装身具が好き」と話していました。
部族ごとによっても特徴があるのも興味深い今回の展示。シルクロードに生きる中央アジアの人たちの文化の一端を触れることができる貴重な機会なので、『乙嫁語り』ファンのみならずアクセサリー好きは一見の価値ありです。
シルクロードのよそおい―トルクメンの装身具を中心に(ポーラ美術館)
http://www.polamuseum.or.jp/exhibition/20160907c04 [リンク]