新宿駅改札徒歩15秒にある奇跡のカフェ。嗚呼「ベルク」を知らない人生なんて!
はじめまして。【美味しい世界旅行!】という食ブログをやっている、メシ通レポーターの(よ)と申します。
さっそくですが、東京・新宿駅の駅ビル内にある「ビア&カフェ ベルク」というお店をご存じでしょうか。東口改札から本当に歩いてわずか15秒ほど。大男が大股で歩いたらマジで30歩くらいでたどり着けるほどの距離です。
最近、このお店にハマりまくって通いまくり、挙げ句に本まで出してしまったのですが、取材で訪れたり、個人的に利用したりしているうち、頭に浮かんだ言葉がありました。
それは「意外性」。駅構内のお店といえばチェーン系で個性もなかったり、必要最低限のメニューしかなかったりしがちな中、このお店は意外性の宝庫なんです。
意外性①:いつも混んでるけど、並べばなんとかなる
新宿駅の利用者数は毎日300万人を超えるそうです。その改札から徒歩15秒で行ける超人気店ですから、平日の昼前の時間などをのぞけば、結構いつも並んでます。
お店に来るお客さんの数は、な、なんと1日平均1500人! 15坪しかない店に1500人ってスゴイ!!
で、この行列を見て入店をあきらめてしまう人も多いんですが、まずはダマされたと思って並んでみてください。
長くても5分くらいで、わりとあっさりレジにたどり着きます。
レジで注文して品物を受け取るファストフード形式ですから、実はあまり待たされません。先客が食べ終わるのを待つラーメン屋の行列なんかとはずいぶん違います。
支払いを済ませてトレーを手に店内を見渡せば、これがまた不思議。経験上ですが、どんなに混んでいても、カウンターのどこかに必ず入れます。
お客さん同士、譲り合ったりしている光景も。
そのまま、カウンターで落ち着くも良し。席が空くのを狙って移動し、長居するも良し。
かるくコーヒー。
しっかり食事。
じっくり飲み。
ニーズによって、いろんな使い方ができて自由。そういう意味では、かなり快適です。
ちなみにレジ前の床を見ると、人の動線に沿ったスゴいすり減り方をしている。さすが1日1500人。建築関係の専門家がこの床を見て「このすり減り方は興味深い」と言ったとか。
意外性②:システムはファストフードなのにこだわりメニューずらり
もう、ベルクのファンにとっては当然のことなんですが、
メニューがめちゃくちゃ多い。
ほんとに豊富過ぎ。
レギュラーメニューだけで100種類以上あるかもしれない。
しかも、どれもかなり美味しい。スタイルと値段はファストフード並なんですが、味は本格派。
中でも、基本中の基本メニューは、
ブレンドコーヒー(210円)。
カフェの基本ですもんね。しかも、実にありがたいお値頃感。
そして、
最もシンプルなベルク・ドック(304円)でしょう。
ベルクの食材の多くは店のスタッフが惚れ込んだ腕利きの職人さんによる逸品で、コーヒー、パン、ソーセージはその三大柱。
ベルクドックを頼むと「マスタードとケチャップをつけないのがオススメです」って必ずスタッフに言われます。もちろん好みで、つけてもつけなくてもOKですが、一度くらいはベルクの基本が凝縮されたシンプルな組み合わせを味わってほしい。
さらに筆者が好きなのは、
ワンプレートにいろいろ乗ったセットメニューのエッセンベルク(714円、ホットコーヒー付き814円)。
このプレートで注目したいのが、
なめらかにシュワ~と口溶けするポークアスピック(白っぽい方)。
そして、レバー嫌いにも「これだけは美味しいと思う」と言わせるレバーパテ。
ともに最高にオススメ。単品でも頼めます。
もうひとつの要注目アイテムは、
大麦と牛肉の野菜スープ。
薄味なんですが、その中にいろんな表情が現れる実に不思議で美味しいスープです。こちらも単品アリ。
そして、もう一品オススメを挙げるとすれば、
フランス風の惣菜、ラタトゥイユ。
オリーブオイルたっぷり目で、スパイスやハーブの香りもしっかり立っている。
そうそう、意外性といえばこんなメニューもオーダーできます。
卵かけご飯! (220円、大260円)
TKGがあるカフェって、かなり意外ですよね(笑)。普通、あんまりお店で出さないでしょ。
でも、ベルクの卵かけご飯は選りすぐりの自然卵を使っていて、なかなかイケるんですよ!
で、写真のように卵をダブルにしたり、バター、コーン、レンズ豆などをオプションでトッピングしたり、さらに唐辛子醤油をかけたりと自由にカスタマイズ可能(オプションで料金増)。
皆さんも独自の食べ方を開発してみてください。
意外性③:客の意表を突く限定メニューが隠れている
以上のような定番メニューだけでもかなりのバリエーションなんですが、その日限定の特別メニューまで充実していて、行くたびに意表を突かれます。
ある日、レジ横の冷蔵ケースを開けてみると、これまた意外なものが。
五目ひじき煮、切干しのサラダ、きびなご、ふき煮、ごぼう煮……。なんとも家庭的な和風惣菜(小サイズ162円、大サイズ294円)。
ひじき煮、選んでみました。
これをツマミに飲むならドリンクは何がいいだろう?
日本酒かな。
これもベルク未体験の人には意外かもしれませんが、ベルクには選りすぐりの日本酒が用意されています。この日は「清泉七代目」があったので、ちょいと一杯。
その他の限定メニューは、例えば、ブルックリンドッグ(クラフトビールのブルックリンラガーとカップリングの限定ドッグ)、鳥の巣ピクルス(ゆで卵のピクルス+ごぼうのピクルス)、ネパール風焼きそばパン、などなど……やっぱり色々あり過ぎて、この記事で全てをカバーするのは無理ですね。
さて、レジ横の冷蔵ケースに戻ると、
ベルクで使用しているソーセージやベーコン、レバーパテが陳列されていて、買って持ち帰ることもできます。
ほかにも、自然卵、ボトルのワイン、ミネラルウォーター、瓶詰めの豆ピクルス、コーヒー豆などもテイクアウトOK。
というか、ベルクはすべての商品がテイクアウトできます。
ちなみに筆者は自然卵や、レバーパテがあると買って帰ります。家でもベルク気分が味わえて、なかなかイイ感じ。
意外性④:ビール通も納得の樽生クラフトビール
さっきも少し触れましたが、ベルクは日本酒のラインナップにもこだわりがあるし、ワインも美味しい。
そして当たり前のように、ビールも美味しい!
しかし、これも全部紹介していると記事が終わらなくなってしまいそうなので、ここでは個人的にハマっているビールに話を絞らせてください。
お店では、普通の生ビール、ギネス、サッポロのエーデルピルスの樽生が常時提供されているほか、2種類のクラフトビールがサーバーにつながっています。
最近流行っているクラフトビールですが、ベルクのラインナップは通も納得。
レジ横のサーバーにオンタップ中のビールが掲示されています。
「ブッルクリンラガー」と「ニューベルジャンのファットタイヤ」といえば、どちらもアメリカン・クラフトビールのシンボル的存在。
ちょうど取材期間中は、米国クラフトビール業界の歴史を綴った書籍にちなんだ「クラフトビール革命フェア」の最中で、アメリカ関連の樽生ビールが続々と抜栓されていました。
別の日には、ホップの香りがフルーティなシエラネバダ・トルピード・エクストラIPAと、茨城県の木内酒造がベルクのために醸造した、アメリカン・ペールエールがオンタップ。
ベルク「でしか」飲めないオリジナルのクラフトビール。よく考えればすごいことですよね。
そういえば以前飲んだ、ベルクと静岡県のベアードのコラボ・ビールで、レシピなども含めてイチから作り上げたという「ハレヤマ」も美味しかった。うーん、また飲みたい!
その他、日によってはベルギーやチェコの逸品がサーバーにつながることも。
さらに、
冷蔵庫には、そのへんの酒屋ではあんまり手に入りそうもない缶入りクラフトビールもアリ。
店で飲んでも、買って帰るのもアリです。
クラフトビール専門店ではないのに、ここまでの充実度って、かなり意外!
意外性⑤:駅ビル構内なのに、タバコOKの貴重な空間
すこし方向性の違う意外さですが、ベルクでは煙草が吸えるエリアがあります(店内分煙)。
この駅ビルの中でおそらく唯一、誰もが堂々と喫煙できる場所。
世間で全面禁煙化が進む昨今、時代に逆行しているかに思えますが、そこにはベルク独自の「分煙哲学」があるみたいです。
お客さんに吸いたい人がいる以上、それを排除することはしない。
賛否両論ありますが、これもベルクらしい意外性のひとつです。
意外性⑥:店そのものがカルチャーの発信地!
店内では『ベルク通信』を配布中。
毎月、ベルクのスタッフがコラムを執筆し、もろもろの情報を発信しているお店のフリーペーパーです
月初になると、最新の『ベルク通信』を眺めながらカウンターで樽生クラフトビールを一杯……が筆者の密かな楽しみ。
その他にも、
各種フライヤー、告知ポスター、ポップの類が店の中、外、そこかしこに。
モノであふれかえるカオスのようなベルクにいると、宝探しのような気分にさせられますが、実際、お店のどこかに100円を隠してtwitterで告知する、という「ベルク店内宝探し」のようなことをしている人もいます(笑)。
物販コーナーも楽しい。
坂口恭平さん、九龍ジョーさん、木村衣有子さんといった、お店にゆかりのある著者さんたちの本や、ベルク関連書籍、CD、Tシャツ、バッジなどのグッズも販売中。
もちろん、
ベルク店長の井野さん、副店長の迫川さんの著書も買えます。
ちなみに2015年末に、筆者が出版した副店長のインタビュー本、『味の形』も絶賛発売中。
これだけでも店内は相当な情報量ですが、さらに壁では月替わりの展覧会が行われています。
2015年の12月は、ベルクのファンでもある漫画家・久住昌之さんの切り絵展を開催。
さらに、店内ではライブなどのイベントが行われることも。副店長にお借りした写真で、イベント時に店内がどんなことになるか、ご紹介しましょう。
にしむられいこさん(フィドル)、内野貴文さん(イーリアン・パイプス)、下田理さん(ギター)による、書籍『ギネスの哲学』出版記念ライブ。
鹿糠ちはるさん(歌)、湯淺隆さん(ポルトガルギター)、阿部浩二さん(ギター)によるポルトガル音楽、ファドのライブ。
震災ちょうど1年後に行われた、室井三紀さんによる琵琶語り。
ベルクのイベントや諸々に関しては、新宿ベルクブログにまとめられているので興味がある方はチェックしてみてください。ちょっとした、カルチャーの発信基地としても機能しているのがベルクなんです。
もしこれが下北沢や高円寺のお店だったら、わりとフツーに納得なのですが、あらためて周りを見渡せば、ここはJR新宿駅に直結した駅ビルの中。しかも改札からわずか徒歩15秒……。
や、ホントに存在自体が意外です。
お店情報
ベルク
住所:東京都新宿区3-38-1 ルミネエストB1
電話番号:03-3226-1288
営業時間:7:00〜23:00
定休日:無休
ウェブサイト:http://norakaba.exblog.jp/
書いた人:
(よ)
『おいしい世界旅行』主宰。2015年末、新宿ベルクの副店長である迫川尚子さんを6万字インタビューした書籍『味の形』をferment booksよりリリース。食べ物の味を「形」として記憶できる迫川さんは、食材の味の微妙な変化も見逃さないのだとか。そんな話から、食べ歩きエピソードや業界のもろもろまで、根掘り葉掘り聞きました。ベルクファンの皆さんはぜひ!
ブログ『おいしい世界旅行』