サービスすぎる化粧品店ランチ! いや、化粧品店でランチってどういうことよ?
住宅街にオジさんたちでごった返す化粧品店がある――。そんな噂を耳にした時、ここ福岡にもオネエ系な人たちが通うことで有名な化粧品店があるのか? と思っていましたが、どうやら違うらしい。とある筋によれば、福岡市の『はかまだ化粧品店』は店内にメイクルームではなく、なぜか喫茶コーナーを併設しているという。特にランチタイムになれば、満席必至の人気ぶりなんだそう。今回は「色気より食い気」な化粧品店を訪れてみました。
福岡七不思議のひとつといえば「清川ロータリー」(と勝手に思っています)。意外に交通量は多いものの、駅前でもないのになぜ? な場所です。ここ清川はかつて「新柳町」という地名で遊郭が建ち並び、中洲よりも以前に栄えた九州随一の歓楽街だったのだとか。そして、このロータリーは元々井戸があった場所で、「売られてきた遊女が身を投じた」なんて都市伝説も・・・・・・。
「清川ロータリー」(写真右側)から(写真左側に)南下すること徒歩1分弱。ポストを通り過ぎたところに現れる最初の交差点を右に曲がります。写真の左奥に小さく「ランチ」と記されたのぼりが見えるでしょうか。こちらが本日の目的地であります。
ほどなくして到着した『はかまだ化粧品店』には大きな看板が掲げられていますが、大通りには一切面していない住宅街にあるため、偶然たどり着ける可能性は皆無といっていいでしょう。そして、看板上部には「Cosmetic」と「Cafe」の文字。なんじゃ、この組み合わせは!?
店先の看板には「HOLLYWOOD」の文字。いよいよカオス!
いざ、勇気を出して扉を開ければズラリと並ぶ化粧品の数々。おぉ、化粧品だらけじゃねーか! とキレそうになるも、ここは1947(昭和22)年創業の老舗化粧品店。看板に偽りなし、なのです。
なになに、クリームが2万円(税抜)! ミルクが1万8,000円(税抜)! 高っけ~!! 高級店で寿司が喰える、ステーキが喰える、と思ったのはいうまでもありません。それにしても、スーパーで売ってる食用の生クリームや牛乳は数百円なのに、化粧品のクリームやミルクってこんなにするんですね……。
これらは今年10月に創業90周年を迎える老舗「ハリウッド化粧品」のもの(店先の看板の「HOLLYWOOD」はそういうことだったのか)。映画の都・ハリウッドの先進性、創造性を受け継ぎ、時代をリードする美容法や化粧品製造を日本に広めたのが牛山清人・メイ夫妻。店にはメイ牛山夫人から寄贈された「女はいつも美しく楽しく」とのお言葉も飾られています。
おっと、当サイトがグルメ情報サイトだということを忘れ、化粧品話に花を咲かせて内なる乙女な部分が開花していました。失礼! 本日は化粧品店の中にある不思議喫茶の取材でした。店内を見渡すと、化粧品コーナーの反対側にカウンター6席、テーブル8席の喫茶スペースがありましたよ、ちゃんと。
メニュー見ると、ピラフにしょうが焼き、ハンバーグ……と、意外に充実しているじゃありませんか。コーヒーだってこだわりの銘柄やウインナーコーヒーなんてシャレたものまでラインナップ。とりあえず、“おすすめ”と記された「昔なつかしナポリタン(サラダ付き)」を注文することに。
いきなり「こちらをどうぞ~」と笑顔と共に運ばれてきたのは、小鉢と小鉢、アンド小鉢、そして小鉢、さらに小鉢。なんだこの小鉢攻め? 居酒屋でいうお通し的なヤツなのか? 5つも出てきたけど、いくら取られるんだ? と頭の中に増殖するクエスチョンマークたち。「すみませ~ん、コレ頼んでないんですけど」と恐る恐る言うと、「サービスですよ」との回答。なんと、コレ無料のサービスなんです! 遠慮なく食べてみれば、どれもサービスとは思えぬクオリティ。うましッ! おふくろの味を凌駕しすぎて、実家の母ちゃんが思い出せないほどです。
そして、本来注文した「昔なつかしナポリタン(サラダ付き)」(650円)が登場。鉄板で供されるナポリタンは、古き良き時代の面影を残すスパゲッティの正しき姿でしょう。「パスタ」なんてシャレかぶって呼んじゃいけません。
こちらのナポリタンは目玉焼きタイプでも溶き卵タイプでもなく、生卵のっけタイプ。鉄板が熱々な内に、豪快に卵をかき混ぜるべし! トロッとした卵が麺に絡まりながら、鉄板の熱で徐々にかたまっていくのが分かります。
粉チーズとタバスコを好みに応じてふりかけたら、いただきます! 麺の所々にコゲができるのは熱々の鉄板ならでは。ケチャップとトマトソースによる酸味控えめ濃厚ソースで真っ赤に染まった麺は、1.5人前はあろうかというボリューム。ただ、麺はナポリタンにありがちな茹で置き太麺モチモチ系じゃないので、腹いっぱいにはなるものの案外スルッと食べられるもんです。
さらに、「ランチタイムのサービスです」とアイスコーヒーが運ばれてきました。おいおい、これもメニューには書いてなかったよ。危うく食後にコーヒーを注文するところだったよ。キリッとした苦みとコクのアイスコーヒーは、ナポリタンが濃厚だっただけに口内をリフレッシュしてくれます。
こちらが袴田さん一家。人のよさが笑顔からあふれ出てるでしょ?
食後にあの怒涛の小鉢連弾は何だったのか尋ねてみました。
元々化粧品を買ってくれてたお客に、母・レイ子さんが家で漬けていた漬物をプレゼントしたのが始まりなんだそう。2004年から喫茶営業をスタートさせてもサービス精神は変わることなく、食事利用のお客には惣菜を小鉢でサービス。その味が評判となり、褒められて伸びるタイプのお母さんの小鉢はエスカレートして5個にまで増えちゃったそうです。営業時間中いつでも食事はできますが、小鉢はランチが始まってすぐの5個が最大数。あとは時間の経過と共に減っていくシステムです。なので、時と場合によっては小鉢が2個だったり、なくなってたりすることも。あくまで小鉢はサービスなのをお忘れなく。
お店情報
はかまだ化粧品店
住所:福岡市中央区清川2-15-3
電話:092-531-5410
営業:9:00~20:00(ランチ11:30~13:30)
定休:日曜
書いた人:
山内淳
福岡の出版社で書店営業をしていたはずが、いつの間にやらフリーランスの編集・ライターへと転身。福岡をはじめ九州・山口のグルメ・ショッピング・旅行などに関する情報を、節操なくさまざまな媒体にて発信する。