Otajo -オタ女-

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Nov 21 2024

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ドラマCD『この男子、悪人と呼ばれます。』山本蒼美監督インタビュー(前) 「萌えるのは黒髪で美少年。健気なキャラクターが好きです」

OVA『この男子、宇宙人と戦えます。』『この男子、人魚ひろいました。』を発表し、その独特のキャラクターや世界観、映像表現が話題となり、2013年10月放映のテレビアニメ『メガネブ!』の監督に弱冠23歳で抜擢された山本蒼美さん。
2013年11月には『この男。』シリーズ最新作となるドラマCD『この男子、悪人と呼ばれます。』(CoMix Wave Films)も発売となり、その感性が発揮されるフィールドを広げています。

『オタ女』では、そんな山本監督にインタビューを実施。アニメ制作をはじめる契機や、『この男。』シリーズのインスピレーション、さらには自身の萌えキャラから将来の野望までお聞きすることができました。前編では、ドラマCDの見どころやキャラクターの魅力についてたっぷりお届けします。

(聞き手:藤本エリ・ふじいりょう)

――『この男。』シリーズ3作目となる『悪人』は初のドラマCDとなりました。もともとラジオドラマが好きだったとのことですが、きっかけとなる番組があったのでしょうか?

山本監督(以下、山本):小学校の頃からNHKラジオの『青春アドベンチャー』がすごい好きで。それで高校生の頃、ネットで人を集めてラジオドラマを作ったりもしていました。ネット声優向けのサイトに、ドラマCDを作りたい人と声優をつなげる掲示板があったんです。自分で企画を立てて、そこでストーリーや役柄やキャラクターを書いて募集して、ぷちオーディションみたいな感じで選んでお願いしました。それで今回、『この男。』シリーズの第三弾をどうするか打ち合わせしていた際に、コミックス・ウェーブ・フィルムから『ドラマCDは?』と提案して頂いたので「ぜひ」と。

――時期的には『メガネブ!』の制作と同時期?

山本:そうですね。ほぼ同時進行だったので両立させるためという物理的な事情もありました(笑)。また、一人で作ってきた今までのアニメとは違ったことをやるのも目標でした。

――アニメと違って、当然ながら映像はないということで、表現が難しい部分もあったのかと思うのですが。

山本:場面変わりとか、絵でぱっと見て分かることでも音だけだと難しいですね。昼も夜も環境音だけで表現しないといけないですし。ほかにも、例えば水道をひねって水を出しているシーンだと、流しっぱなしじゃないとおかしいんだけど、耳には邪魔。でも音をなくしちゃうと「いつ締めたの?」ということになったりもします。そういう矛盾をどうするのかといったことが難しかったです。

――今回は『宇宙人』『人魚』とは趣が変わり、H&H社に茜という女子が入るという群像劇になりました。

山本:これまでのOVA作品1話分の28分と比べてドラマCDは尺が倍くらいのボリュームで描けるということで、人数多いことができるな、と。個人でアニメを作っていると、どうしても物量の問題で主要キャラが5人以上出るのは難しい(笑)。中学の頃、イケメンがいっぱい出てくる『鋼の錬金術師』や『コミックZERO-SUM』(一迅社)、『Gファンタジー』(スクゥエア・エニックス)の作品が好きだったので、そこに戻ってみたというところもあります。

――茜は、ストーリーを進める上でも重要な存在だったのではと思います。声には伊藤美来さんをキャスティングしています。

山本:伊藤さんは音響監督さんの紹介で、「現役女子高生だよ!」というのにときめいて(笑)。新人でも演技はしっかりしていて、その上その歳だからこそ出せる声なんですよね。アフレコ時の指示には無茶ぶりが多くて大変だったと思います。でも実は私自身、茜にあんまり感情移入できなくて、シナリオの際に迷うこともありました。自分自身は茜のように「いい人」って、言われたことがないんですよ(笑)。どちらかというと、私はH&H社側の性格ですね。

――そのH&H社は個性的なキャラクター揃いですね。山本監督のカラーが反映されているのでしょうか?

山本:一番私に似ているのはセブンですね。一見やさしいようでいて、実は本当に相手のことを思っているわけではなくて好きなことを言っているだけ。恋愛感情とは遠くて中身が見えない…。社長は私の考えた悪いオトナ、という感じですが、人をだますために相手のことを知ろうと行動する。でも、セブンは顔がいいので相手が寄ってくるから、その必要すらない。人に興味がないんだと思う。そこが自分に近いですね(笑)。

――セブン役の木村良平さんは、『宇宙人』のカカシ役や『メガネブ!』の木全隼人役に引き続いての出演になりますね。

山本:実はセブン役をキャスティングしたのは『メガネブ!』よりも先で、重なったのはたまたまなんです(笑)。詐欺師で七変化するという役柄なので、演技力抜群な木村さんに振ってみたら面白そうだな、と思って。あとで本人に「難しいよ!」と怒られました(笑)。

――山本監督の作品はどれも独特の感性で描かれているのが印象的ですが、ストーリーはどのようなものから着想を得ているのでしょうか?

山本:『宇宙人』の時は寝てる時に見た夢からでした。一時期ずっと見た夢のメモを取っていて、それをもとにアニメにしようとやっていました。たまにビジュアルがアニメとかマンガの時があって。まるでテレビアニメ見ているような感じだったり、マンガの場合はそこでコマが割られていることもあります(笑)。

――夢でコマ割り! それは子供の頃から?

山本:小さい頃もよく夢は見ていて、見たままのストーリーを学校の友達や親に話すようなことはしていましたね。

――なるほど。映像的なインスピレーションはどうでしょう?

山本:すごく好きなのは自然とか植物ですね。虫とかキノコとか。私は蛍光色がすごい好きなんですけれど、自然には彩度の高いものがあるんですよね。小さい頃に芋虫を見たことがあって。太陽の光がキラキラとあたって黄緑のグラデーションになっていた。人生で一番綺麗に感じたのがそれだと思います。でもそれがうごめくので超気持ち悪いんですよ(笑)。「キレイ」と「キモチワルイ」という相反したものが一緒にあるのがすごいな、と。

――そういった体験をもとにアニメにしてしまうというのがすごいです(笑)。山本監督といえば新海誠監督の『ほしのこえ』を観たことがきっかけでアニメ制作をはじめたということですが、ほかに好きだった作品があれば教えて下さい。

山本:TVアニメだと『カードキャプチャーさくら』や『神風怪盗ジャンヌ』は観てました。それから、家でWOWOWの無料放送アニメで『SHUFFLE!』にハマったりもしていましたね。あとは『ほしのこえ』のようにDVDで観て…アニメ映画なら大友克洋作品や今敏監督の『パプリカ』が好きですね。

――『宇宙人』『人魚』はBL的な要素もあると思いますが、もともと好きだった?

山本:BLはすごい好きで、実家の本棚が壁一面BLなんですけれど(笑)。きっかけはよしながふみの『西洋骨董洋菓子店』。中3か高1くらいの時に古本屋で立ち読みをしている時に読んで知って、すぐに買って帰りました(笑)。そこから『ウィングス』(新書館)が好きになって、姉と二人でハマりました。姉だけでなく、母もマンガ全般が好きでBLも勧めると読みますよ。

――ご自身、「萌える」キャラクターの属性があったりするのでしょうか?

山本:萌えるのは黒髪で美少年。頭がいい、おませな話し方をする小学生の探偵とか好きです。残念ながら自分の作品には一切出てきていないのですが、いつか出るかもしれません(笑)。あとは、『宇宙人』のカカシも『人魚』の洲(シマ)も健気なのが共通しているんですよね。人のことを思って自分だけで抱え込んで頑張ろうとする。そういう健気なキャラクターが好きですね。

(以下、後編 https://otajo.jp/33051 に続く)

『この男子、悪人と呼ばれます。』(公式サイト)
http://www.konodan.com/badman [リンク]

(c) Soubi Yamamoto / CoMix Wave Films

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記者プロフィール

ふじいりょう

乙女男子。2004年よりブログ『Parsleyの「添え物は添え物らしく」』を運営。ネット、メディア、カルチャー情報を中心に各媒体にいろいろ書いています。好物はホットケーキとプリンと女性ファッション誌。

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