同棲してふられたMちゃん、さてどうする? の巻(犬山紙子のイラストエッセイ)
私の友だちのMちゃん。彼女はかなりのしっかり者で、1つ年下とは思えないオーラをかもし出している。
そんなMちゃん、22歳のときに同棲(どうせい)していた彼氏に振られてしまったそうな。経験のある人はわかると思うけど、同棲から別れるのは、精神的にも、体力的にも、金銭的にもキツイ。別れを告げられたとて、新しい家が見つかるまでは気まずいまま一緒に住まなきゃいけないし、荷造りも大変だし、引越しとなると30万から50万かかるのだ。別れのことを考えたら、結婚まで考えられない人と同棲はすべきではないよなあ……。
まあ、上から目線で語ってみたが、他人の幸せを羨む私には同棲する相手すらいないのだから、むしろ同棲はしてみたいものである。どうでもいいか。
とりあえず、荷物がまだ残ってるうちに、新しい家に引っ越したMちゃん。彼とは顔もあわせたくなかったそうで、彼が仕事に行ってる間に残りの荷物をまとめに行くことに。1週間ぶりに彼の家の鍵を開ける。
久しぶりに入る思い出の詰まった家。少し泣きそうになりながら荷物をまとめようとしたら!
なんとテーブルの上に手紙が置いてあるではないの!!!!
これは、彼からのMちゃんへの、謝罪か、やり直そう、という愛のメッセージか……!!???
しかし、それは新しい彼女に宛てた手紙であった…………。
しかも、自分をのび太、相手をしずかちゃんに例えたポエム調のうすら寒い手紙…………。
まだ、彼女はいない、とか言ってたくせに、これである。てゆーか、別れて1週間で彼女いるってことは絶対平行して付き合ってた期間があるはずである。しかし、ウソを吐かれていたショックより、こんなうすら寒いポエムを書く男と自分は付き合ってたのかというショックのほうが大きかったそうな……。
で、なんかムカつくから……
冷蔵庫に入ってた、なんかおいしそうなりんごジュース、ぶどうジュース、オレンジジュースを全部飲み干してやったそうな…………。
…………なんじゃそりゃ…………。
やってやった! という顔でMちゃんがこの仕返しを話してくれたけど、元彼からしてみたら、家に帰ったらジュースがなくなっていた、というただの怪奇現象である。仕返しの種類としてはまれな類だけど、規模が小さい。
なんだよ! その程度! と私がプリプリすると、
「いや、そののび太としずかの手紙もビリビリに破ってやったよ?」
とMちゃん。うーん、まあ、別にその程度、そこまでじゃないよなあ……書き直せば済む話だし。
犬山、Mちゃんの仕返し方に、どこか引っかかりながらも、
「Mちゃんはきっと仕返しなんかできない純粋な子なんだな」
と思い始めた。そして、そうだ、ひどいことされても仕返しなんか、考えちゃいけないんだ。と、犬山も純粋な気持ちになった。
「あ、あと、100万、もらった!」
まじかーーーーーーーーーー!!!
なんとまあ、Mちゃん、その後彼に電話して、引越し代プラス慰謝料として100万もらうことに成功したそうなのだ……。もらいすぎじゃん……私の純粋な気持ち返せ!!!!
そして、同棲からの別れの良さに味を占めたMちゃん(冒頭に書いたとおり、凡人には同棲からの別れはキツイものです)。その後4人と付き合うも、必ず同棲をして、別れ際に金をもらうようになったとさ……。
そして、7年たった現在。
Mちゃん、慰謝料たちを元手にして、なんと会社をおこしたのである…………。失恋の傷を金に変え、更に金を生み出す!!! その発想…………新しい!!!!
「ただで、傷つくなんか、バカらしいでしょ。恋愛したら、何か作り出さないとね」
うむ。恋愛の末、女が生むのは子どもだけではなく、会社だって作品だって、何だって生めるのだ。かっこいい!
まあ、うまいこと言われたけど、言い換えれば金をむしりとっただけなんだけどね☆
終・わ・り☆