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Dec 02 2024

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人気異色BLゲーム舞台化 本能バースト演劇「sweet pool」開幕!官能的なシーンの大胆さと儚さをダンスで美しく演出

人気BLアドベンチャーゲーム「sweet pool」の初舞台化作品 本能バースト演劇「sweet pool」が開幕、3ルートの公演でライブ配信も実施します。

原作「sweet pool」は2008年にゲームブランドNitro+CHiRAL (ニトロプラス キラル)からPC版が発売し、10周年の2018年にリマスターされたPS Vita版がリリースされるなど、今なお熱狂的な支持を受け続ける異色の成人向けBL(ボーイズラブ)アドベンチャーゲーム。

原作シナリオは『咎狗の血』シリーズでデビューし、『DRAMAtical Murder』シリーズなどの人気BLゲームシリーズを生み出している淵井鏑氏が手掛ける、「恋ではなく、愛でもなく。もっとずっと、深く重い――。」をキャッチコピーとしたダークでグロテスクなシリアスなオメガバースの先駆け的な作品です。

水音の響く舞台上にポツンと現れたのは主人公・崎山蓉司(櫻井圭登)。そこに登場人物たちがゆらゆらと漂いながら集まてくる。蓉司もまた、その中を漂いはじめ、「産めよ、増えよ」と語る不穏な声に巻き込まれていった――。

舞台となるのは東京都菅見区、私立駒波学園。体調を崩して1年留年した蓉司が復学した日から物語は動き始める。青白い顔で教室に佇む蓉司。そこにやって来たのは、唯一の友人・三田睦(杉江大志)だ。蓉司とは対照的に健康的なルックスで、朝からアイスクリームを食べ、蓉司を気に掛けている。

同じ教室にいるのは城沼哲雄(砂川脩弥)。寡黙で、言葉を交わしたわけではないのに、なぜか自分に視線を向け続ける哲雄を、蓉司は苦手に感じている。学校で奇行を繰り返すのは翁長善弥(宇野結也)。蓉司に執拗に絡み、「お前は自分と同じ種類の人間だ」という言葉を投げかけてくる。

そんな日常に、ある異変が訪れる。それは、蓉司の身体から産まれる、おぞましい“肉塊”。果たしてこの肉塊は幻なのか、現実なのか。なぜそれは産まれるのか。未知の存在になっていく自分自身に戸惑う蓉司の運命を導くのは――。

舞台の原作ゲーム「sweet pool」は、その時々で主人公・蓉司が「本能」と「理性」のどちらに従って行動するかを選択し、それによってストーリーが変化していくBL18禁アドベンチャーゲーム。同様に舞台でも、哲雄が蓉司の運命を導く相手となる【通常公演】に加え、内容の一部が変わるエクストラver.として【ver.睦】【ver.善弥】という、3つのストーリーが用意されている(本レポートでは【通常公演】の内容・写真をお届けする)。

本作で軸となるのはもちろん蓉司。どこにでもいる普通の学生だったはずが、身体から肉塊を産むようになるという、かなり難解でヘヴィーな設定を櫻井さんは丁寧に演じることで、私たちも「sweet pool」の世界にすんなりと馴染むことができる。

蓉司自身はお喋りではないキャラクターだが、この舞台では蓉司の内に秘めた感情も台詞で語っている。そのため、「会話としての言葉」と「感情を語る言葉」をほとんど途切れさせずに話すような場面も見られた(もちろん、そこが混同することは一度もなかった)。

そこで印象的だったのは、それほどたくさんの言葉を語っているのに、そのどちらでも触れていない何かが蓉司から溢れていると感じさせる芝居だ。哲雄への想いが溢れ劇場が満たされていくような場面は、「sweet pool」ならではの美しさを感じた。また、官能的なシーンも多く、蓉司の入浴シーンなどはかなり大胆に見せていたが、その際の身体表現は櫻井さんにしか出せないような魅力がある。

砂川さんが演じる哲雄は、寡黙で、ほとんど喋らないと言っても過言ではない人物なのだが、なぜか雄弁なイメージが残ったのが面白い。言葉で語らずとも、その目で、その存在で、そして蓉司をはじめとする周りの人物による縁取りで、彼が語らんとする言葉が見えてくるのだ。少しの違いで乱暴な印象にもなる人物像を、不器用で温かな人物として届けたのは砂川さんの演技力だろう。

睦は元気印とも言えるキャラクターなのだが、杉江さんが演じるとそこに独特の深みが生まれる。蓉司への友情が独占欲へと変化していく過程では、ほんの少しの手の動き、ほんの少しの言葉の詰まり、ほんの少しの躊躇で、じわじわと気持ちがねじれていく様を客席に突き付けてくる。目の色がサッと変わる様は、もしかすると誰より怖いのではないかと思うほどゾクッとさせた。

善弥は宇野さんの新境地。エキセントリックで、学校では「変人」と噂される存在だ。彼が登場する度に空気はしっかりおかしくなるのだが、その奥にある感情が見え隠れしてしまうのが宇野さんの芝居の魅力。父親に「できそこない」と罵られながらももがく姿や、姫谷やペットにだけ見せる表情などを見ていると、彼をここまで追いつめたものや彼が欲しかったものに思いを馳せずにいられなくなる。

さらに、幼い頃に両親を事故で亡くした蓉司をここまで育て、現在は妊娠中の姉・芹沢枝里香(永田紗茅)。善弥の父であり元暴力団の組長であったが、頭に銃弾を受けて以来、ある神を過剰に崇拝するようになり、組を追放された翁長邦仁(若杉宏二)。恩人である邦仁を追って組を辞め翁長家の使用人となった姫谷浩平(福地教光)。私立駒波学園の教師・上屋武彦(村田充)。

この4人の大人たちが作品の世界を広げていく。厚みのある芝居、奥行きのある佇まいで、学生4人の“今”に彼らが関わっているのだということ、つまり人は一人で生きているわけではないのだということを、強く意識させてくれる。それによって、登場人物たちの一つひとつの選択、つまり「本能」か「理性」かというところにも、より大きな意味が生まれた。この8人全員が物語を運んでいく。そこが本作の大きな魅力になっている。

“本能バースト演劇”と謳った本作。中屋敷法仁氏が手掛ける演出は、映像やダンスの振付なども、役者そのものを、もっと言うと人間そのものを、より生々しく見せるためのものであるように感じる。そういう剥き出しの場所で生まれる、恋や、愛や、友情や、衝動や、絶望や、忠誠は、まさに“なまもの”。そこに触れ、何を感じるのかは、劇場で体感してほしい。

また、カーテンコールではSNS投稿OK(ハッシュタグは「#スプステ」)の撮影タイムも設けられている。ぜひスマホは機内モードにして、取り出しやすい場所に用意しておいてほしい。ちなみに本作はDVD化の予定はない。ぜひ劇場で目撃してください。

公演情報

タイトル:本能バースト演劇「sweet pool」
期 間:2022年3月12日(土)〜3月21日(月・祝)
劇 場:天王洲 銀河劇場
原 作:Nitro+CHiRAL
演 出:中屋敷法仁
脚 本:内田裕基
出 演: 
崎山蓉司役 櫻井圭登
城沼哲雄役 砂川脩弥
三田 睦役 杉江大志
翁長善弥役 宇野結也
姫谷浩平役 福地教光
芹沢枝里香役 永田紗茅
翁長邦仁役 若杉宏二
上屋武彦役 村田 充
主催:本能バースト演劇「sweet pool」製作委員会
◆チケット好評発売中
チケット取扱い
・ローソンチケット https://l-tike.com/sweetpool/ 
〈Lコード:31099〉
・銀河劇場チケットセンター https://www.gingeki.jp/
(PC&スマートフォン)TEL:03-5769-0011(平日10:00~18:00)
※当日券あり
◆「お楽しみ企画」スケジュール
全ステージ共通
カーテンコール中、指定した時間内の写真・動画の撮影が可能です。
3月13日(日) 18:00[睦] アフタートーク(中屋敷法仁・櫻井圭登)
3月14日(月) 19:00[通常]ホワイトデープレゼント
3月16日(水) 14:00[睦] リモートお見送り(櫻井圭登・杉江大志)
3月16日(水) 19:00[通常]ゲストアーティスト(木村世治)/スタッフTシャツプレゼン

3月17日(木) 14:00[通常]リモートお見送り(砂川脩弥・宇野結也)
3月17日(木) 19:00[善弥]NEWアフタートーク(杉江大志・宇野結也・福地教光)/ポス
タープレゼント
3月18日(金) 19:00[通常]ゲストアーティスト(いとうかなこ)/スタッフTシャツプレ
ゼント
3月20日(日) 18:00[通常]NEWアフタートーク(櫻井圭登・砂川脩弥・福地教光)
公式サイト:https://www.gorch-brothers.jp/sweetpool_stage
公式ツイッター:@sweetpool_stage
(C)本能バースト演劇「sweet pool」製作委員会
(C)2008-2022 Nitroplus
ハッシュタグ:#スプステ

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