Otajo -オタ女-

Today is
Nov 22 2024

記事

フィリピンの新人女性監督がポップな色彩で描く恋と夢『SHIFT 恋よりも強いミカタ』

こんなにそばにいるのに、果てしなく遠い、恋人までの距離。『胸騒ぎの恋人』を彷彿とさせるストーリー、『恋する惑星』の様にキラキラと輝くポップな映像。フィリピンの新人女性監督が手掛け「大阪アジアン映画祭2014」でグランプリを獲得した『SHIFT 恋よりも強いミカタ』が現在公開中です。

本作の主人公は、シンガーソングライターになることを夢見ながら、コールセンターで働くエステラ。仕事もできるイケメンの先輩トレバーと意気投合し、エステラは彼に恋心を抱くが、トレバーには仲の良い“彼氏”がいて……。若者の等身大の恋愛、夢、仕事、現実、そしてLGBT。これまでフィリピンに抱いていたイメージを覆す都会的でエモーショナルな作品に仕上がっています。

映画について「内容の90%が実体験」と語る、シージ・レデスマ監督にインタビュー。作品について、フィリピンの映画事情について、色々とお話を伺ってきました。

―映画拝見して、とても都会的で、LGBTといった題材を扱っていながらも、等身大なラブストーリーだなあと共感しました。このストーリーを思いついたきっかけはどんな事だったのでしょうか?

シージ・レデスマ監督:この物語のベースを書いたのは7年ほど前です。当時、俳優のガエル・ガルシア・ベルナルにハマっていまして、『天国の口、終りの楽園。』を観て、トランスジェンダーに興味を持ったのもきっかけです。

―映画の中で、トレバーはゲイを堂々とカミングアウトしていますが、フィリピンではLGBTに対する考えはオープンで浸透しているものなのでしょうか?

シージ・レデスマ監督:ここ10年くらいで、LGBTコミュニティの広がりは感じています。それは、フィリピンの有名人やニュースキャスターたちがゲイやレズをカミングアウトして「性別にとらわれず自由な恋愛をしよう」とポジティブな発言をしている事も影響しています。

―また、エステラが働いているのがコールセンターという所も現代的で自分と近い感覚で観る事が出来ました。

シージ・レデスマ監督:コールセンターでの描写は私が実際にコールセンターで働いていた時の経験も活かしています。コールセンターで働いている人はほとんどが大卒で、大学では好きな事を勉強したが、希望通りの職には就けずに……という若者が多いです。そして、仕事の時間以外は演劇やバンドに打ち込んだり。

―そうして聞くと、今の日本の状況とよく似ていますね。チャットを使ってコミュニケーションをとったり、SNSの写真を見て嫉妬したり、心配になったりというシーンも“あるある”でした。

シージ・レデスマ監督:SNSはフィリピン人のほとんどが使っているんじゃないかと思うくらい、生活に浸透しています。ホームレスのおじさんが、住む家は無いのにスマートフォンでSNSを楽しんでいるという事があるくらいなんですよ(笑)。これはフィリピン人の「人とつながりたい」と強く願う国民性にもよるのかもしれません。

―特にエステラが意中のトレバーと、どうでもいい元カレと同時にチャットしている時のテンションの差には笑ってしまいました。トレバーにはノリノリでレスポンスもはやいのに、元カレには「あー、はいはい」とあしらう感じで。女性なら共感する人が多いと思います(笑)。

シージ・レデスマ監督:それは嬉しいです(笑)。女性って本当に正直ですよね。好きな人と、それ以外の人では態度がまるで違う。

―監督はウォン・カーウァイ監督がお好きという事で、私も大ファンなのですが、本作もそうであった様に「片想い」という題材に惹かれるのでしょうか?

シージ・レデスマ監督:私の30年の人生がずーっと片想いだからですね。ゲイの方に恋をした事もあります。もちろん愛は返ってきませんでしたが。

―ゲイの方に恋をするのって“究極の片想い”とも言えますよね……。この映画は恋愛だけでは無くて、「夢」についても描かれています。エステラは、シンガーソングライターという夢を持っているのになかなか叶えられないという現状で、そんなストーリーを生み出した監督はこうして映画監督という夢を叶えたという所がとても面白いなと思いました。

シージ・レデスマ監督:私は国からの助成金で映画を作りましたが、「大阪アジアン映画祭2014」でグランプリを取り、こうして日本で公開する事が出来て本当に嬉しいです。フィリピンではまだエンターテイメント色の強い、いわゆるスターが出ている映画が好まれているので、この映画を作った時には「アート色が強すぎる」と言われたんです。でも、実際にはそういった作品ではありませんし、公開されてからは「共感出来た」「私も同じような経験がある」と言ったコメントをいただく事が多かったです。私の個人的な実体験や感情をもとにストーリーを書いたのに、多くの人に楽しんでいただけるのは、本当に喜ばしい事です。

―監督のこれからの活躍を期待しております。今日はどうもありがとうございました!

『SHIFT 恋よりも強いミカタ』ストーリー

真っ赤な髪のエステラの夢は、シンガーソングライターになるこ​と​。だけど、​いまはコールセンター​で​働いている。夢​見るだけの​​毎日も​なかなかうまくいくわけでもなく、これで良いのか?と自分探しの​日々​。​職場に​遅刻してばかりのエステラに、面倒見がよく、仕事も​出来るイケメンの先輩トレヴァーが教育係に​任命され、ふたりはすぐに意気投合する。やさしくサポートしてくれるトレヴァーに、エステラはやがて​友達以上の淡い恋心を抱き始め​るのだが、トレヴァーとの間には、どんなに背伸びをしても超えられない壁があって…。

http://picturesdept.com/jp/titles/shift/

その他のおすすめな記事はこちら!

記者プロフィール

藤本エリ

日常系アニメと、黒髪・細身キャラクターをこよなく愛するライター。一番応援している声優は小野大輔さん。

カルの新着記事一覧

PAGE TOP