『劇場版ムーミン 南の海で楽しいバカンス』監督インタビュー「彼らの“その日暮らし”な所が好き」
日本でも多くの人に愛されるキャラクター・ムーミン。愛らしい見た目と個性的なキャラクター設定はもちろん、意外とシニカルなストーリーで大人にも大人気ですよね。
そんなムーミンの作者であるトーベ・ヤンソンの生誕100周年を記念して作られた『劇場版ムーミン 南の海で楽しいバカンス』が2月13日より公開となります。
地中海沿岸のリゾート地リビエラにやってきたムーミン一家の冒険を、フィランド製ムーミン作品としては初の全編手描きアニメーションとして描き、色彩鮮やかでとっても暖かい作品。今回は本作を手掛けたグザヴィエ・ピカルド監督にインタビュー。映画作りについて、ムーミンへの想いなどお話を伺ってきました。
――本作はバカンス中のムーミン一家を描いていて、フローレンが現地のプレイボーイたちに夢中になってしまうなど、なかなか衝撃的な展開が印象的です。このストーリーを劇場版に選んだ理由は何ですか?
グザヴィエ監督:実は『ムーミン』という作品は、僕の暮らすフランスやドイツなどヨーロッパの南側ではあまり知られていないんですね。ムーミン谷には色々な生物がいて、自然があって、それも魅力的なのですが、ムーミンをあまり知らない人に分かりやすい様に一家を中心に描きたいと思いました。そこでバカンスで南の島を訪れるこのストーリーを選んだわけです。
――フランスでムーミンが知られていないというのは意外でした。
グザヴィエ監督:フランスでムーミンを知っている人はトーベ・ヤンソンをリスペクトしているアーティストばかりで、日本やイギリスの様に子供から大人まで楽しめる作品ととらえられてはいないんです。
私は90年代に日本人とアニメを作っていた事もあり、何度か日本に来ているんですね。そこで、アニメ作りの参考や資料になる作品を本屋さんで買って帰る事が多かったんです。その中に『ムーミン』を見つけて。絵がすごく純粋で、一筆書きの様な独特のバランスに魅了されたんです。
――また、ムーミンって可愛らしいだけでは無くて非常に哲学的な考え方も多く、ストーリーも楽しめますよね。
グザヴィエ監督:ムーミンたちって、良い意味でその日暮らしで将来の事を考えていないんですよね。例えば食器を洗わなくちゃというのでは無くて「雨が降るまで待ってればいいよ」と、自然にまかせた生き方をしている。
――監督が特に好きなキャラクターは誰ですか?
グザヴィエ監督:ムーミンママです。ムーミンママは、自分の意志がハッキリしていて辛口のユーモアがある。いつもエプロンをつけているのに、主婦の仕事をしているだけでは無く教養もあって、独立心も強い。家族の中心で、皆をまとめていく面白いキャラクターですよね。ムーミンのキャラクターは全てそうなんですけど、特にムーミンママは「今日を楽しく生きよう」という気持ちが強いですよね。コーヒーがきれたら「すぐに買いにいかなくちゃ」じゃなくて、「今日は飲まないで過ごそう」と言ったり。
――今回の映画って色遣いがとても印象的ですよね。
グザヴィエ監督: バカンスで南の島に到着した時のキャラクターの幸福感を表現する為に暖色系の色を使っています。葛藤するシーンではブルーなど、感情を色で表現する事で、本の『ムーミン』には無い演出をしています。後、これは色彩の話ではありませんが、実は波の描き方は葛飾北斎をイメージしていたりするんですよ。
――手描きアニメの暖かみというのが、本当に観ていて幸せになります。
グザヴィエ監督:日本の皆さんはアニメ『ムーミン』を親しんでいた人が多いと思いますが、この劇場版はトーベ・ヤンソンの原作のイメージをそのままに、手描きアニメで作っています。新鮮に感じていただき、素晴らしいムーミンの世界を楽しんでいただけたら嬉しいです。
――今日はどうもありがとうございました!