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Apr 19 2024

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『映画 ひみつのアッコちゃん』の美術監督・岩城さんに聞く“レトロ可愛い”映画の魅力

9月1日より公開され、現在大ヒット中の『映画 ひみつのアッコちゃん』。綾瀬はるかさんと岡田将生さんの共演や、あの名作がどの様に実写化するのか? など話題に事欠かない本作ですが、女子的な注目ポイントは何といってもカラフルでキュートな世界観。

アッコちゃんのお部屋をはじめ、映画に出てくる家具やインテリア、小物の一つ一つがレトロでどこか懐かしく、女性の中の“女の子ゴコロ”をくすぐります。

本作の美術監督を務めたのは、『さくらん』(07/蜷川実花監督)で美術監督デビューし、同作で「日本アカデミー賞優秀美術賞」、「日本映画テレビ映像技術奨励賞」を受賞。その後も様々な作品で活躍している岩城南海子さん。

今回は、岩城さんに映画美術のこだわりポイントから、美術監督になったきっかけまでをインタビュー。インテリア好きや、映画、美術関連の職業に興味がある方は必読です。

――はじめに、実写映画「ひみつのアッコちゃん」の企画を聞いた時はどの様に思いましたか?

岩城南海子さん(以下、岩城さん):最初は、「アッコちゃん」を映画化すると聞いて驚いたのですが、絶対カワイイ絵づくりが出来るなって楽しみに思いました。

――アッコちゃんのお部屋をはじめとする、美術のイメージ、アイデアはすぐにまとまりましたか?

岩城さん:可愛らしくてカラフルな「色で見せていきたい」という方向性はすぐに決まりました。原作の「ひみつのアッコちゃん」のイメージが前提があって、ファンタジー作品であるので色味とか、こういう物を置きたいというイメージはどんどん浮かんでいたので。

――レトロでポップで、それでいて今の若い世代には新鮮に写る、とてもキュートな世界観でしたね。壁紙とか、私が子供の頃にはまだこういう柄が家にあふれていたので懐かしかったです。

岩城さん:そうなんです! まさにそういったイメージを目指しました。現代の日本のインテリアって白が基調となっていたり、シンプルで万人に受けるものが多いのですが、「アッコちゃん」のお部屋だったら、やっぱり可愛くしたいですよね。アニメよりも漫画原作の「アッコちゃん」の世界観は意識しました。

今改めて原作を読むと、本当に「ひみつのアッコちゃん」って可愛らしい作品なんですよね。当時の流行だと思うのですが、いつもワンピース着てて、頭にカチューシャつけていて原作のアッコちゃんは、どちらかというと昭和のノスタルジックなんですよね。

――アッコちゃんを演じた綾瀬さんも楽しんでいたのではないでしょうか?

岩城さん:すごく可愛いと褒めていただいて、「アッコちゃんのお部屋ってこんな感じなんだ~!」と言ってくださいました。

↑岩城さんが描いた、アッコちゃんのお部屋のイメージスケッチ。

――本当に、お部屋全体のインテリアはもちろん、チラっと、映る小物までとても可愛くて楽しかったです。

岩城さん:ありがとうございます! 今回美術のスタッフが全員女性だったので、みんなそれぞれにこだわりがあって、細かい飾りに個々のアイデアが散りばめてあります。

――美術スタッフが全員女性というのは珍しいケースなのではないでしょうか?

岩城さん:そうですね、私が担当した現場の中でも初めてです。もちろん、最近は映画の現場に女性が増えてきたという傾向はあるのですが、全員というのは珍しいですね。今回はどうしても、女性らしさや可愛らしさにこだわりたいということもあったので。

――監督は男性ですが、意見やアドバイスはいただいたのでしょうか?

岩城さん:「アッコちゃん」らしい、華やかで可愛らしい雰囲気は全てまかせていただいたのですが、アッコちゃんが働く「赤塚化粧品」のオフィスなどは特に、リアリティを失って欲しく無いというお願いはされました。全てが漫画にならない様にはとても気をつけました。

「赤塚化粧品」のイメージカラーは赤と黒と決めていたので、オフィスの中の椅子なども赤と黒でポイントを統一して。リアリティは持たせたいけど、殺風景過ぎるオフィスでは無くて、アッコちゃんが会社を訪れた時に「一緒に働きたいな」って思えるような、楽しそうな雰囲気は意識しました。

↑岩城さんが描いた、「赤塚化粧品」オフィスのイメージスケッチ。

――なるほど、そういった工夫やこだわりがあるのですね。

岩城さん:ファンタジーとリアリティのバランスにすごく悩みました。作品としてはバランス良くできたのかなと思いつつ、まだ客観的に観れていない部分はあるんですけど。

――岩城さん自身も子供の頃「ひみつのアッコちゃん」は楽しまれていたのでしょうか?

岩城さん:やっぱり好きでしたね。女の子は絶対に魔法のコンパクトの変身ごっこをやっていますよね。子供の頃って、男の子でも女の子でも変身願望がありますもんね。

――アッコちゃんがお母さんの化粧品を勝手に使うシーンも、「そうそう!」って子供時代を思い出します。

岩城さん:映画の美術や小物を製作する際に色々な会社の化粧品を集めて意見を出し合った時に、やっぱり女性陣の中で「これお母さんが持ってた!」とか「子供の頃お母さんの化粧品を勝手に使った」とか思い出話に花が咲きましたね。「昔の化粧品の香りって独特だよね」とか(笑)。

――岩城さんが子供の頃なりたかったものは何ですか?

岩城さん:自分には取り得が絵しかなかったというか、絵を描くことが好きだったので、美術に関わるお仕事がしたいなと思っていました。

――すごい! その頃の夢を実現されているということですね。実際に、映画美術の世界に入られたきっかけはどんなものだったのでしょうか?

岩城さん:高校生の時、映画や演劇がすごく好きで、自主映画でも良いからいつか自分でも撮りたいなという想いがあって、短大の時に小劇場を観にいって「スタッフ募集」のチラシを見つけて、現場にいって、Vシネの現場だったのですが、その時の助監督さんが「本当にこれから映画の世界に行きたいのなら美術監督を紹介する」と言ってくださって、それがきっかけです。

そこで出会った稲垣尚夫さんという美術監督さんに連れていっていただいた、最初の現場が今村昌平監督の『うなぎ』だったんです。その後はフリーでいくつか作品を担当させていただいて、今に至る、という感じですね。

――本当に映画が好きで、自分から興味のある世界に飛び込んだということですね。美術監督デビューである映画『さくらん』も『ひみつのアッコちゃん』とはまたイメージが異なるカラフルな作品ですが、もともとカラフルな世界観がお好きなのでしょうか? 影響を受けた作品はありますか?

岩城さん:私が影響を受けて、「この映画があったから今がある」と思える、大好きな映画が一つあって、ブライアン・デ・パルマ監督の『ファントム・オブ・パラダイス』という作品なのですが、独特の世界観や色遣いで、DVDはもちろん、パンフレットやフィギュアまで探して買い集めて、今でもよく観ています。

――ご自身のお部屋もやはりカラフル?

岩城さん:古い物が好きなので、木彫の家具と、からし色とグリーンと……そう思うとアッコちゃんのお部屋の印象を落ち着かせた感じかもしれないですね。レトロなデザインや、カラフルで可愛い食器や家具や全部集めたいくらい好きですね。

今回の作品に限らず、美術監督に必要なのは観察力であると思っていて、オフィスのデスクだったらこれくらいの幅だろう、とかバーのカウンターのサイズはこれくらいだろう、と生活の中で身体が覚えていくものを、スっと現場で出せるのが大切かなあと感じます。

――岩城さんは自分が大好きな映画の世界に飛び込み、美術の世界で活躍されているわけですが、この映画も「子供の頃の夢」「大人になるってなんだろう」といったメッセージがこめられていますね。

岩城さん:アッコちゃんが大人と関わって成長していく過程も観れるし、アッコちゃんによって変わっていく大人たちも観れるし、色々な世代の皆さんに楽しんでいただける作品になったと思いますね。

あとは、綾瀬さんがとにかく可愛いのと、アッコちゃんが谷原章介さん演じる「熱海専務」や大杉蓮さん演じる「中村前社長」に変身するシーンなど、「これぞアッコちゃんの醍醐味!」という感じでとても楽しいです。ぜひ色々な方にご覧いただきたいと思います。

――どうもありがとうございました!

取材当日は、今回記事でご紹介したイメージスケッチ以外にも、「赤塚化粧品」のパッケージデザインなども見せていただき、まさに“宝の山”状態でした! とても柔らかい雰囲気で、優しくお話くださった岩城さん。それでいて、自分の好きな映像、演劇に実際に飛び込んだというエピソードはとてもバイタリティにあふれていて憧れちゃいます。

映画のストーリーはもちろん、美術や衣装など見所盛りだくさんの『映画 ひみつのアッコちゃん』は、現在大ヒット公開中です。

http://www.akko-chan-movie.com

(C)赤塚不二夫/2012「映画 ひみつのアッコちゃん」製作委員会

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記者プロフィール

藤本エリ

日常系アニメと、黒髪・細身キャラクターをこよなく愛するライター。一番応援している声優は小野大輔さん。

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