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Nov 21 2024

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「癒される」「自分もスカウトされたい」 居場所がなくて悩む新社会人がタヌキになるマンガに本物の優しさがあった

仕事で疲れ果てて踏切で死のうとしたOLの野々原さんをタヌキのこがね丸がスカウトするというストーリーが、Twitterで約73000のRTと247000以上の「いいね」を集めて話題となり、生きるのがイヤになった人間とさまざまなタヌキの交流を描き続けている奈川トモさん(@nagawatomo)のマンガが、2021年5月1日に『お前、タヌキにならねーか?』として『comic POOL』(一迅社)より単行本として刊行されます。また、最新話の『死のうとしたらタヌキにスカウトされた新社会人』では、環境が変わって心機一転と思いきや、数カ月後に駅のホームで飛び降りようとしているメガネ男子を例によってこがね丸がタヌキにスカウトしようとする話になっており、「癒される」「優しさに救われる」「いつも考えさせられる」といった反応が続出しています。

※参考記事 「抱っこされたい!」「モフモフはしてもされても至福」 残業で疲れ果てたOLさんをタヌキが家まで送ってくれるマンガが癒やししかなかった
https://otajo.jp/96439 [リンク]

「やっと終わった。あの辛い日々には、もう悩まなくていい」と学生の時を振り返り、「新しい出会い、新しい日々が始まる! 僕は変われる。やっと変われるんだ!」と桜が舞う駅でスーツを初々しく着て意気込むメガネ男子。ですが、数カ月後には「電車が通過します。危ないですから黄色い線までお下がりください」というアナウンスを無視して焦点の合わない目でホームの端に立ち尽くしています。そんな中、「うまそうなもんで落ちてるのか? …ねぇな」と声をかけられ、「!?」と声を失っているところ、「おまえ、タヌキにならねーか?」と言われて、「な…な…なんで…」「タヌキ」「えっ、……っ」と驚いているうちに電車が過ぎ去ってしまい、「…はい」と答えます。

「すごい。本当にタヌキになった」という男子。「…僕…いつも居場所がないんです。僕がダメな人間だからどこへ行っても失敗しちゃって…。変わらなきゃって思っても結局変われなくて…」と胸の内を話し、「じゃあタヌキに変わってちょうど良かったな」というこがね丸に、「…そう、ですね。もう人間として頑張らなくて良いと思うと、気持ちが楽になりました」といいます。「そんじゃー、お前にタヌキの生き方を伝授しよう」「はい、アニキ!」「飯を探しに行くぞ!」「はい、アニキ!」「今日は魚の気分だ!」「はい、アニキ!」とすっかり舎弟のようになりますが……。

岸壁で「ししし…死ぬかと思いましたよ。やっぱ無理ですって。魚なんてとれっこないです!」とプルプル震える男子。一方のこがね丸は「そっかー…」と首を傾げますが、もう大漁。「!? めっちゃとってる!」と驚かれ、「なんかこう魚が波にのってスィーとした所をシュバってやってガッてやるとな、とれるんだよ」と説明しますが、「とれませんよ。関西人みたいな説明やめてください」と言われてしまいます。「落ちてた魚は猫に奪われたし…こわかった…何アレ…ヤクザかと思いましたよ」と自然の厳しさを感じて、「僕はタヌキになっても駄目タヌキなんだ…」と落ち込む男子に、「まぁ、慣れたら大丈夫だろ」というこがね丸。それに男子は「違うんです…!」と遮って……。

「アニキは分かってないんです。僕の覚えの悪さも、体力の無さも、根性の無さも、僕がどんな人間か知らないからまだ優しいことが言えるんですよ!」と吐露する男子。「ふむ…」「ほら、こうやって卑屈になって、人を困らせるんですよ…。それで結局みんな嫌になって…」と続けますが、こがね丸の「俺は別に嫌になってねーぞ」「そんな慰めなんて…」「お前がクヨクヨしても俺は元気だ」と突き放すような言葉に「え?」となります。それに構わずに「落ち込むのも卑屈になるのも、お前が選んだことだろ。俺にはどうしようもないからな」というこがね丸。「それ…ちょっと冷たくないですか?」「そぉか?」「アニキは僕が落ち込んでも関係ないってことですか!?」「うーん」「アニキがそんな冷たい人…タヌキだなんて、やっぱりタヌキには人の気持ちなんて分からないんだ!」と口論の末に泣きながら走り出します。

ポーンと岸壁から飛び出してしまった男子。「落ちっ…!!!」となったところ、人間に变化したこがね丸が間一髪のところで掴んで「タヌキじゃなくて魚になりたいのか?お前は…」「アニ…キ…?」と二度目の救出。

「魚ってよ、水中でしか生きられないんだ」と語るこがね丸。「…そうですね」と相槌を打つ男子のことを「お前はなんつーか、陸を歩きたがってる魚みてーだな」と評します。「ちゃんと息が吸える場所で泳ぐ魚はキレイだぞ。そういう魚はきっと、魚でよかったと思ってるはずだ」と語られて、「僕は今まで、息の吸える場所にいただろうか…? 足もないのに陸の上で跳ねていたんだろうか…?」と省みて、「アニキは冷たいんじゃなくて、こんな僕でも受け入れてくれてただけじゃないか…?」と思い、「アニキ…さっきはごめん」と謝ります。

「僕もなりたい。僕でよかったと思える自分に」と人間に戻って涙を浮かべる男子。「まだ想像もつかないけど…」という言葉に「そうか? 俺にはもう…そんな魚になり始めているように見えるぞ。半魚人だな」と笑うこがね丸に、「半魚人!? なんかそれ違くないですか!?」「今は半ダヌキだもんな」「いやそうでもなくて」と言い募りますが、「それよりこの魚、どうやって食う?」「それより!? …くっ」となりつつ、焼き魚をリクエスト。「その日の魚はごく普通の魚だったけど、すごくすごく美味しかった」といいます。

こがね丸について「いい人…いやタヌキだ」「自分もスカウトされたい」という声が集まっていたこのマンガ。今回、奈川さんに単行本の内容を中心にお話をお聞きしました。

--2020年8月に『死のうとしたらタヌキにスカウトされたOLさん』をTwitterに公開して大きな反響がありました。この作品はどのようにして生まれたのでしょうか?・

奈川トモさん(以下、奈川):かなり遡りますが、最初にタヌキのマンガを発表した去年の夏頃は長いことスランプに陥っていた時期でした。これから先、何を描いたら良いのか分からないような状態でした。人間がタヌキにスカウトされるというプロットはそれより二年も前に考えていたもので、当時はお蔵入りになったのですが、これを改めて練り直すことで初心に帰り、自分を励ますつもりで描いた作品でした。ですので、単行本になることは全く想定していませんでした。一度はボツになった作品ですし、商業ラインに乗せて人気が出るような内容だとも思っていなかったので、連載などを意識していたならば絶対に世に出てこなかった作品だと思います。

--『お前、タヌキにならねーか?』として刊行に至った経緯と、率直なご心境をお願いします。

奈川:最初の作品があまりにも予想を遥かに上回る反響をいただいたので……。発表後に商業化のお話をいただいた時も、この作品を上手く育てていけるか自信もなかったのでかなり悩みました。制作時間も十分にとれるか不安があったので踏み出せずにいたのですが、現在の担当編集の方が心身ともに無理のない制作ができるよう考えてくださったことで今に至ります。二年後三年後を想定して、地道に勉強しなおそうと思っていたので、こんなにも早く本が出せることになったのは、ものすごく幸運だったと感じています。お力添えしてくださった出版社の方々や、励まし続けてくれた読者の皆様には感謝しかないです。

--ご自身、小学生の頃に飼育委員としてタヌキと接する機会があったとのことでしたが、タヌキのどんなところに魅力を感じていらっしゃるのか、改めてお願いします。

奈川:野生動物なので犬や猫のように人間の傍に置いて愛でる対象ではないのですが、自然の中で逞しく生きている姿もどこか愛らしく、タヌキの習性や性格はもちろん、昔話に度々登場する存在感まで夢があって素敵だなぁと感じています。

--メインタヌキの一匹のこがね丸について、性格や人間をスカウトする理由を教えてください。

奈川:こがね丸は人間でも見て見ぬふりをしそうなことにまで首を突っ込んでいくので、おせっかいな性格かもしれませんね。むしろ異種族だからこそ平気で首を突っ込むのかもしれませんが……。スカウトする理由も1話で「山にタヌキがいねーんだ」と言っていましたが、それが全てかというと……。いずれ本編で触れていけると良いなと思っております。

--テレビ朝日公式YouTubeの『動画、はじめてみました』で、関智一さんと三石琴乃さんが『迷子の少女と長老タヌキ』がアフレコの作品として選ばれて、注目が高まったようにも思います。

奈川:『迷子の少女と長老タヌキ』を発表して約一か月後に、テレビ朝日『お願い!ランキング』のスタッフ様よりDMを頂きました。どこで私の作品を知って下さったのか……。巡り巡って知って頂く機会があったのかと思うと、日頃から応援してくださっている皆様のおかげだなと感じました。朗読してくださった関智一さんも三石琴乃さんも、自分が子供の頃からご活躍されていて、雲の上の神様みたいな存在だったのですが、作品を通して関わっていただける機会が訪れことは本当に光栄でした。こんな機会は望んでも得られることではないので「すごい!すごい…!」と担当さんと一緒に感動を分かち合ったのは良い思い出です。

--読者からの反応について、どう感じていらっしゃいますか?

奈川:タヌキという共通点があるからシリーズとして成り立っていますが、キャラクターや展開をガラリと変えていくことも多いので、読者の皆様の反応も千差万別……感想から学ぶことも多いです。でもやっぱり、マンガを読んで「元気が出た」「心が軽くなった」と仰って頂けることがとても嬉しいです。

--単行本の見どころはどんなところになるのでしょうか?

奈川:この作品はなるべく短いページで話をまとめようと描いてきたのですが、単行本ではTwitterで描き切れなかったキャラクターたちのその後や、これまでの関係性を少しだけ補足させて頂きました。全部で9つのショートストーリーを描き下しましたので、「その後どうなったの!?」という読者の皆様の声に少しでもお答えできる内容になっているかと思います。

--この作品の今後の展開や、読者へのメッセージをお願いします。

奈川:これまで通りこがね丸を中心に、人間やタヌキの人間(タヌキ)模様を描きつつ、野々原さんのこれからや、こがね丸自身にももっと触れていきたいと思っています。2021年4月28日より『comicPOOL』で連載がスタートしましたので、こちらでも改めて作品を楽しんで頂けると嬉しいです! また、タヌキのグッズやLINEスタンプが欲しいという声も頂いているので、いずれ実現できるといいなと思っています。まだまだ駆け出しの作品ですが、読者様と一緒に盛り上げていけるといいなと思っているので、お気軽にコメントを頂けると嬉しいです!

--ありがとうございました!

『お前、タヌキにならねーか?』(pixivコミック)
https://comic.pixiv.net/works/7466 [リンク]

※画像はTwitterより
https://twitter.com/nagawatomo [リンク]

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記者プロフィール

ふじいりょう

乙女男子。2004年よりブログ『Parsleyの「添え物は添え物らしく」』を運営。ネット、メディア、カルチャー情報を中心に各媒体にいろいろ書いています。好物はホットケーキとプリンと女性ファッション誌。

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