『ONE PIECE FILM RED』シャンクスの娘「ウタ」へのこだわり 谷口悟朗×名塚佳織インタビュー Adoの特殊な収録秘話も
劇場公開20日で興行収入100億円、公開38日間で観客動員1000万人を突破し、大ヒット上映中の『ONE PIECE FILM RED』より谷口悟朗監督とウタ役・名塚佳織さんの対談をお届けします。
ついに連載開始“25周年”に突入し、クライマックスへ向かい動き出した『ONE PIECE』の最新映画は、総合プロデューサーを原作者・尾田栄一郎先生が務め、谷口悟朗氏(「コードギアス」シリーズ)を監督に迎え、赤髪のシャンクスの娘・ウタをヒロインにストーリーを展開します。
世界の歌姫「ウタ」は、中田ヤスタカ、Mrs. GREEN APPLE、Vaundy、FAKE TYPE.、澤野弘之、折坂悠太、秦 基博という総勢7組の豪華アーティスト提供楽曲を劇中で披露。さらに、そのウタのボイスキャストを幅広い役柄を演じる実力派声優の名塚佳織さん、歌唱キャストを圧倒的な歌唱力と表現力で瞬く間に話題となったAdoさんが担当していることでも話題の本作。
ウタのボイスキャストを務めた名塚佳織さんと、1998年に『ONE PIECE 倒せ!海賊ギャンザック』で監督デビューを果たし、再び本作で『ONE PIECE』に舞い戻り新たな可能性を描き出した谷口悟朗監督にお話を伺いました。
――今回、シャンクスの娘を題材にすることになった経緯を教えてください。
谷口:最初に脚本家の黒岩勉さんやプロデューサーチームと共にのほうで、今までの映画の流れを見て、求められているのはアクション映画かな、となりました。“アトラクション感強めのアクション映画”を意識したら、尾田さんから「実は伝説のジジイを描くのはもう飽きたんですよ」と根底をひっくり返すようなことを伺って(笑)。何かを足さなければならないと思いました。
アイデアの中に歌を歌っている女の子が中心のものがあったので、「歌を使いましょう!」とこちら側から提案しました。尾田さんは音楽好きなので、私としては切り札を使うような気持ちでの提案でしたね。歌が中心となってからは、より大きく派手に華やかにしたほうが『ONE PIECE』だよね、という周りからの意見もあり、今の形に至りました。
――シャンクスの娘というのは『ONE PIECE』ファンなら誰しも驚く存在だと思いますが、名塚さんはウタを演じることになりいかがでしたか?
名塚:それはプレッシャーですよね(笑)。私もイチ読者としてウタの存在には衝撃を受けましたし、「どういうこと?」ってなりました。本当に皆さんと同じ気持ちでした。
歌唱はAdoさんがされるとオーディションの時から伺っていたので、準備としてAdoさんの色々な歌やトークをとにかく毎日聴いて。合格してからは更に本格的に研究し、どういう風にウタというキャラクターを作っていけばいいか、ということに集中していきました。
――先にもうAdoさんが歌うことは決まっていたんですね。
谷口:脚本段階では、歌唱と演技を1人の人で出来ないか?というのはあったんですけれど、ウタの歌声に説得力をつけるために分けましょう、となりました。そうすると、ともかく歌唱担当が決まらないとキャラの声だけ先に決めてしまうわけにはいかず。候補を探していたら、制作陣も尾田さんもAdoさんのお名前を挙げていて。すぐにお声かけして、快諾いただけたので一気に動いていけました。
――そのあとオーディションを実施して、名塚さんが合いそうだ、となったと。
谷口:最終的に私の出した候補と、尾田さん側が出した候補の中ですり合わせをして話し合いました。そこで名塚さんにお願いしよう、となりました。
――作品を鑑賞して、演出面など、「谷口さんの好きにやってください」と言われたのかな?と感じるぐらい谷口監督らしさが散りばめられているように思いました。
谷口:どうでしょう。どちらかというと、今回は尾田さんが原作者というだけでなく総合プロデューサーでもあるから、かなり細かいことまで密に連絡をしていました。当初(梶裕貴さん演じる)ヨルエカなんて名前もない、脚本上でも完全にモブの少年でしかなかったから、こちら側でデザインなども用意しようと思っていたんです。そしたら尾田さんからある日キャラクターデザインが届いて、名前まで付けてくださっていて。となると、ちゃんと扱わなくちゃいけないな……。誰か声優もきちんと呼んだほうがいいかな、となって「うーん、やってくれそうなのは梶くんさんかな」って。
――(笑)。
谷口:前から『ONE PIECE』好きとは聞いていたので、参加してもらいました(笑)。尾田さんがデザインして名前まで付けたキャラクターなんだから、ちゃんとした扱いをしてあげないと(笑)。
名塚:梶くんが『ONE PIECE』を好きだと言うのは私も聞いていたので、このお話し、梶くんの耳に届いたら凄く喜びそうですね。
谷口:また、ウタウタの世界と現実の世界を分けたのは、脚本の黒岩さんの発案なんです。シャンクスとルフィは原作の設定上、会うことが出来ないんですよ。そうすると、ルフィが活躍している間は、シャンクスはまだ到着していなくて、シャンクスが到着したらルフィが気絶していて、とかも考えたんですけど、すごいコメディのように見えちゃうというか(笑)。だったら最初から世界を分けてしまいましょうか、となって今の形になりました。
世界を別々に分けてしまえるなら、元々別の形の世界空間にできたり、そこでの能力を発揮できるドアドアの実の能力者、ブルーノなどのキャラクターも出しやすくなるので、時空間の移動もしやすくなるし、画としても面白いからそれでいきましょうとなっていきましたね。
――名塚さんは『コードギアス』などで谷口監督とご一緒されていますが、作品をご覧になっていかがでしたか?
名塚:私は『ONE PIECE』のTVシリーズに少しだけ出演させていただいたことがあるんですけど、本当にゲストキャラという形だったので、今までとの違いや谷口監督だから、というところは言えないんですけど。
でも、収録のスタイルで言うと、谷口監督の現場だなという印象はありました。すごくこだわる部分があったり、テストからしっかり組み立ててくださる。『コードギアス』のときも、2回テストをしてから本番を録るんですけど、とにかく本番に一番良い状態を持っていきたいので、テストですごくしっかりお互いに確認し合うんです。1回テストが終わった後に監督たちが入ってきてくださって、1人1人のキャラとやり取りをする。それでもう1回テストをやって全体のバランスをしっかり整えて、最後の収録でなるべく一発で全員録れるように持っていく、というスタイルだでした。
今回は、テストは1回だったんですけど、それはルフィやシャンクスのキャラクターがもう出来上がっている部分があるので、そこにウタをいかに馴染ませていくか、という向き合い方でした。その作り方は谷口監督の作品らしいなと感じました。
――キャラクター設定でこだわった部分は?
谷口:キャラクター設定でこだわったのは、やはりウタですね。どこに模様をつけるかとか、半袖をノースリーブにしたいとか、尾田さんと話し合いをしながら決めていきました。そこそこ注文したと思うんですが、きちんと答えを出していただいて感謝しています。ウタのキャラクターにそれなりの強さがないと成立しなくなってしまうので、その要素を入れてもらって。
逆にデザインから物語に反映したのがウタの手にある<新時代のマーク>。実は脚本には最初はなかったんですよ。尾田さんがデザインを描いてこられていて、これが私の中ですごくヒットしたんですよね。
それを元にして、「このマークを描いたのは誰なのか?」だったり、付随した物語を作ることが出来て、そのマークを今でも使っているという心理的なところ、なんらかの思い入れがあるんだろう、と繋げられたというのがあるから、ウタは全体的に思い出深いですね。翼の色も左右で分けちゃうとか、色々試した上で最終的に出来上がりました。
――そんなウタを名塚さんが演じる上で意識した部分は?
名塚:「何も怖いものがない、この年齢ならではの自信を持っていてほしい」と、一番最初に監督に言っていただいたので、とにかくしっかりそこはブレないように意識しました。「何も怖くない」という自信が全面にある中で、だからこその危うさや純粋さ、大人になりたいと思っている“なりかけの部分”、それが常に行ったり来たりしているみたいな。自分の中では1つの信念に向かって走っているつもりなんだけど、客観的に見るとちょっとブレていたり。そんな空気を全体的に纏わせられるように想いを込めてやらせていただきました。
――名塚さんが演じたからこそ、生まれたウタの部分はどんなところがありますか?
谷口:プラスαの部分ですね。セリフやアニメーション上の芝居だけから来る情報量だけではない部分は、やっぱり声で補って貰わないとどうしようもない。例えば、泣きの感情を入れるのか、逆にそこは入れないのか?とか、そうすることによってそれを受けたルフィやシャンクスがどう捉えるのか?とか、声のお芝居の大きな流れで最終的に軸が成り立つんです。お芝居を聞いていて、名塚さんにお願いして良かったと思っいました。
同時に、歌唱担当のAdoさんに対しても、事前に「この曲のウタの想い・心情はこうです」と事前にお伝えはしていましたが、どのくらいそれを表現できるのかは、こちらとしてもわからなかったんですよ。なので上がってきた曲を聞いて、Adoさんの答えを出していただけていたので、やっぱり良かったなと思っています。
――名塚さんはAdoさんとのWキャストでしたが、意識はされたのですか?
名塚:実際のウタの楽曲をアフレコ前に聴かせていただくと、歌によって作品の中の流れで感情や雰囲気をすごく変えてくださっていたので、歌の導入部分と終わりからセリフへをスムーズにいきたいなと思っていました。彼女の歌を聴いていると自然と自分の中にそのテンポ感や呼吸感みたいなものが入ってきたので、吹き替えをやる感覚に近かったです。
海外ドラマなどの吹き替えのときも、何回も本来の役者さんの声を聴いて、呼吸を合わせてブレスを取っていくんです。それと同じようにAdoさんと同じ呼吸の仕方を見つけていければ近いものになっていくのかな、と思ったので、そういったところに注目して歌など聴かせていただきました。
――楽曲によってガラッとAdoさんの声質の雰囲気が変わる印象を受けました。そのあたりのディレクションはされたのでしょうか?
谷口:いや、Adoさんのシーンについては特殊で、歌声を録っているところに関しては、誰も立ち会わないんです。だからこちら側としては、彼女が万全にできるだけの事前の打ち合わせと、準備が重要でした。途中で「これはあくまでチャレンジになるから、やってみて無理だと思ったらやらなくてもいいですよ」ということが1箇所あったんです。ただ、そこも本人が「やってみたい」とちゃんとやってくださって、プロ意識の高さを感じました。
――では、改めて本作の見どころお願いします。
谷口:この作品は笑いあり、涙あり、アクションありの、とても由緒正しい日本の大衆芸能映画みたいなものになっていると思います(笑)。
ライブシーンは、お客さんに対して、満足感を与えたいと思い作りました。満足感を与えるためには、今までの歌を使ったアニメーションとはまた違う何かを与えてあげなければならない。その刺激として必要としたものです。だから、歌を楽しみに観に来ていただいてもいいんですよ。でもそれとは別にアクションを楽しみに観に来ていただいても結構ですし、誰か特定の推しキャラがいたらそれを観に来てもらっても結構です。
ただ、この作品の一番の良さはまず映画館でわかるように全部チューニングして作っているので、映画館で楽しんでいただけると嬉しいですね。
エンターテイメントの要素は全部入っています。何もこんなに入れなくても良かったよな、と思っているくらい入っていますので(笑)。なおかつ、中田ヤスタカさんが作られたコメディっぽい曲とか他ではなかなか聴けないと思いますから、そこも楽しみにしてください。中田さんもまさかバルトロメオに対して曲を作ることになるとは思わなかったと思います(笑)。
名塚:監督が仰ったように全部乗せな作品だと改めて思います。本当にどの切り口からでも楽しんでいただけると思いますし、観ていただければ、別の楽しさも伝わるんじゃないかなと思いますね。
あと、やっぱりルフィとシャンクスがとにかくカッコイイので! それが今までの強いラスボスを倒すパターンのカッコよさではなく、精神的な面でのカッコよさというのがすごく今作は際立っているんじゃないかなと思うので、そのルフィたちの想いや気持ちを存分に受け止めてもらえたら嬉しいなと思います。
――ありがとうございました!
今週末9月17日(土)からは第4弾入場者プレゼント『ONE PIECE』コミックス巻40億〝RED〟アンコールの全国200万部限定での配布が決定!
さらに、10月1日(土)配布開始の第5弾は「〇〇が観られる!デジタルコンテンツカード」、10月15日(土)からの第6弾は「〇〇イラスト登場!ポストカードセット」、10月29日(土)からの第7弾は「劇場限定ワンピの実〇〇〇〇〇」も予定。アイテム詳細の続報をチェックして、ぜひ劇場に足を運んでください!
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作品情報
『ONE PIECE FILM RED』
公開日 2022 年 8 月 6 日(土)
原作・総合プロデューサー:尾田栄一郎(集英社「週刊少年ジャンプ」連載)
監督:谷口悟朗 脚本:黒岩勉 音楽:中田ヤスタカ キャラクターデザイン・総作画監督:佐藤雅将 美術監督・美術設定:加藤浩
色彩設計:横山さよ子 CG ディレクター:川崎健太郎 撮影監督:江間常高 製作担当:吉田智哉
田中真弓 中井和哉 岡村明美 山口勝平 平田広明 大谷育江 山口由里子 矢尾一樹 チョー 宝亀克寿
名塚佳織 Ado 津田健次郎 池田秀一
山田裕貴 霜降り明星(粗品、せいや)新津ちせ
主題歌: 「新時代 (ウタ from ONE PIECE FILM RED)」Ado (ユニバーサル ミュージック)
劇中歌 楽曲提供: 中田ヤスタカ Mrs. GREEN APPLE Vaundy FAKE TYPE. 澤野弘之 折坂悠太 秦 基博
(C)尾田栄一郎/2022「ワンピース」製作委員会
配給:東映
【公式サイト】onepiece-film.jp 【公式 Twitter】@OP_FILMRED/#OP_FILMRED #ONEPIECE
≪ストーリー≫
世界で最も愛されている歌手、ウタ。素性を隠したまま発信するその歌声は”別次元”と評されていた。
そんな彼女が初めて公の前に姿を現すライブが開催される。色めき立つ海賊たち、目を光らせる海軍、そして何も知らずにただ彼女の歌声を楽しみにきたルフィ率いる麦わらの一味、ありとあらゆるウタファンが会場を埋め尽くす中、今まさに全世界待望の歌声が響き渡ろうとしていた。物語は、彼女が”シャンクスの娘”という衝撃の事実から動き出すー。
「世界を歌で幸せにしたい」とただ願い、ステージに立つウタ。ウタの過去を知る謎の人物・ゴードン、そして垣間見えるシャンクスの影。音楽の島・エレジアで再会したルフィとウタの出会いは 12 年前のフーシャ村へと遡る。