「愛と変態というエンターテインメント」江戸川乱歩没後60周年記念『RAMPO WORLD』映画『3つのグノシエンヌ』『蟲』『白昼夢』魅力を松田凌らキャスト&監督が語る
江戸川乱歩没後60周年記念作品『RAMPO WORLD』と題して乱歩作品を原案にした映画『3つのグノシエンヌ』、『蟲』、『白昼夢』が10月3日(金)より2週間ずつ連続上映されることが決定。9月4日に完成披露舞台挨拶付き先行上映会が開催されました。
今年2025年に本格推理小説や怪奇・幻想小説の祖として後世に名を残した作家・江戸川乱歩が7月28日で没後60年を迎えました。
この度、江戸川乱歩没後60周年記念作品『RAMPO WORLD』と題して乱歩の作品を原案に設定を現代に変え、オリジナル解釈を加えた「3つのグノシエンヌ」、「蟲」、「白昼夢」が10月3日(金)より2週間ずつ連続でシネマート新宿、池袋シネマ・ロサほか順次公開します。
9月4日に開催された完成披露舞台挨拶付き先行上映会には、10月3日(金)より公開の「3つのグノシエンヌ」の哲役の松田凌さん、妻役の安野澄さん、後輩役者・悠介役の岩男海史さん、ウエダアツシ氏(監督・脚本・編集)。
10月7日(金)より公開の「蟲」からは柾木愛之助役の平埜生成さん、芙蓉役の佐藤里菜さん、池内役の木口健太さん、平波亘氏(監督・脚本)。
10月31日(金)より公開の「白昼夢」から渡会役の見津賢さん、真柄華恵役の上脇結友さん、真柄太郎役の宮田佳典さん、山城達郎氏(監督)の総勢12名の登壇登壇し、3作品を題した「RAMPO WORLD」の魅力を語りました。
映画上映前、3作品の監督、キャスト陣が「RAMPO WORLD」とプリントされたおそろいのTシャツを着用してステージに登壇すると会場からは大きな拍手が。
実はこれはファッションデザイナーとしても活躍する、『3つのグノシエンヌ』キャストの岩男海史さんがデザインしたもので、デザインのポイントについて「(Tシャツの)後ろに3作品の劇中写真を使わせていただいていますが、その中で僕がポイントだと思うところだけ色を残して、他のところをセピアにしました!」と説明。
このTシャツは登壇者たちにも好評で、楽屋でも「おしゃれ!」「すてき!」といった感想が飛び交っていたそうで、「もしよかったら、いつでも量産できるかも。グッズみたいな形で」と意気込む岩男さん。
さらに「監督がキャップがお好きだとおっしゃっていたんで、今日はこれをつくってきました」と、ウエダ監督に「RAMPO WORLD」のキャップを、そして共演者の松田さんと安野さんには「RAMPO WORLD」のニット帽をそれぞれプレゼント。サプライズで送られたこのプレゼントには3人とも「めっちゃうれしい!」と大喜び。
ウエダ監督も「これって舞台あいさつ用につくったんですよね? それで(より高価な)バックプリントにしたんですか?」と驚きながらも、「なんだかお金の匂いがしますね」とニヤリ。岩男さんも、その言葉にまんざらでもない様子で「そうですね……そのあたりも……」と否定もせず。そのやり取りに会場もドッと沸きました。
そして、ここからは3作品の主演に見どころを聞くことに。
まずは『3つのグノシエンヌ』主演の松田さんが「これは個人的に思うことなんですが、人って誰しも狂気を孕(はら)んでいるなと思うんです。『3つのグノシエンヌ』では、4人の登場人物が主に関わってくるんですが、それぞれの愛や欲が重なり合っていくと、禁忌に近づくんだなと思いました。そんな触れてはいけないものに皆さまには触れていただきたいなと思います。そこの先には、実生活にないような新しい面白みが待っていると思うので。ぜひそういったところに注目してください」とコメント。
続いて『蟲』主演の平埜さんは「どん詰まりの映画監督の青年が、友人の紹介で、ある女性に出会い、その女性との出会いをきっかけに愛に向き合い、“うわあ!”と、“うわあ!”となっていくような、そんな愛の詰まった映画。ある種、究極のラブストーリーだと思っているので、それぞれが抱えてるラブストーリーに注目していただけたら嬉しいです」。
さらに『白昼夢』主演の見津さんは「主人公の青年が、自分の住むマンションの下に住んでいる夫婦の生活をのぞいているというのが大まかな話となります。映画って、観客が映画に出ている人たちの物語をのぞいている、という感覚だと思うんですけど、今回は“のぞいている人をのぞく”という、また一枚フィルターが挟まったような、面白いフェーズの見方ができる作品だと思うので。そこを楽しんでいただけたら」と見どころを語りました。
また撮影中のエピソードについて質問された『3つのグノシエンヌ』チームの安野さんは「劇中には松田さんと岩男さんの熱いシーンがあるんですよ。そこのシーンについては(ネタバレになるので)今はまだ言えないですが、そのシーンの翌日に岩男さんとの撮影があった時に、岩男さんが『松田凌がすごいんだよ』って話をずっとされていて、本当に松田さんのことが大好きなんです。もう“分かった”というくらいずっとされていたんですが、そこに愛を感じて。なんか素敵だなって思いました」と語ると、岩男さんも「強烈な俳優と出会ったなと思ったんですよ。しかも同じ1991年生まれで同い年。めちゃくちゃ楽しかったです」。
一方の松田さんも「それは逆に僕も思いました。本当に強烈な……というか“鮮烈な出会い”でした。彼のお芝居で、監督が『面白いね』というリアクションをしていたりして、(相手の芝居を)引き出してくれるというか。本人の魅力が爆発した瞬間に……俳優を嫉妬させる俳優だなと思うような感じがありました」とベタ褒め。そんな松田さんの言葉に「うれしいですね」とかみ締めていた様子の岩男さんでした。
続いて『蟲』チームを代表して佐藤さんが「わたしはヒロインということで、いろいろとはじめてのことがたくさんあったんですけど、撮影初日にぬれ場ということで。それが本当にはじめてで。今振り返ると『大丈夫だったかな』とかいろいろと考えるんですけど、でも皆さんの力で本当になんとかできたかな、とは思っています」と振り返ると、木口さんも「やはり初日に、みんなでとてつもないエネルギーを注がないといけないシーンがあったことで、一体感みたいなのが生まれた感じがしていて。本来なら(そういうシーンは撮影の)後ろの方にあるはずなんですけど、それが初日だったんで。それから僕たちも、平埜を愛してやまないんで。そういう気持ちが生まれたの初日でしたね」と力強くコメント。
その言葉を受けた平埜さんも「撮影初日がぬれ場の撮影だったので、やはり緊張していました。はじめましてみたいな状態からいきなり濃厚なシーンが始まって。僕は観察者として、二人の行為を見ながら戦慄(せんりつ)する、という役だったので。いきなり熱量の高いシーンから始まった。でもそんなすごいシーンなのに監督は、影でコソコソ笑ってらっしゃる姿もあって。それはなんだか『いい座組が始まったな』というイメージでした」と満足げに語りました。
そんな中、『白昼夢』チームの上脇さんは「皆さんが熱量の高いお話をされてるところ、真逆のお話を持ってきてしまったんですけど……」と笑いつつも、「スタッフさんからも作品の愛がすごく感じられてて。わたしたち夫婦が住まわせていただいてた部屋もすごく素敵だったんです。また、そこにあるベッドがとてもいいベッドで。一回起きてこなかったよね?」と宮田さんに語りかけると、「ちょっと寝ちゃいました」と笑った宮田さん。上脇さんも「本当に起きてこられないくらいすごくすてきなベッドでした」としみじみ語りました。
その言葉を聞いていた見津さんが「それと僕も本当に宮田さんを愛しているので」とたたみかけて会場を笑わせると、「宮田さんとは現場に入る前に、本読みとかリハをさせてもらったんですけど、そこが初めてましてなのに、もう作品をどうしようかと、そのことばっかり話していました」と宮田さんの魅力について力説してみせた。
さらに寒い時期に撮影が行われたという本作について見津さんが「この作品は(乱歩の)『湖畔亭事件』を原案としているので湖が出てくるんですけど、11月くらいだったので、本当に寒くて。唇の色がなくなるぐらい寒かった。でも本当にそこのシーンは一番、画面がきれいなんで。そこを楽しみにしていただけたら」と語りました。
本シリーズは江戸川乱歩の原作をもとに、オリジナル解釈が加えられて現代に蘇った作品となりますが、そんな作品の台本を読んだ感想について質問された岩男さんは「台本を読んで本当にやりたいと。俳優冥利(みょうり)に尽きるなと思いました」と述懐。
「人生で1回は江戸川乱歩の作品がよぎるというか。『やってみたらどうなんだろう』と思いながらも、『いやいやそんなそんな』と理性で消し飛ばすようなところもあって。そこを探求していくみたいなところがある。あとはエロスですね。それは決して性的な意味だけじゃなくて、『やってはいけない』というのが分かってるからこそ、逆に引かれてしまうというか。それは江戸川乱歩作品全般にあるのかなと思っていました」とコメント。
続いて木口さんも「実は僕もこのお話をいただく前に、原作をすごく読みあさっていて。こんなタイミングで本当にできるのか、と思ったんです。もちろん原作と映画の脚本は違うんですけど、原作を読んでるときはめちゃくちゃ柾木に感情移入してしまって。『こういう役をやりたい!』と思っていたんですけど、映画では『柾木役じゃないのか……』と思ってしまったんですが」と笑いつつも、自身が演じた池内という役についてはなかなか理解ができなかったという。「でも、だからこそチャレンジングだったなと思っていて。そういう意味でもやれてよかったし、こうやって江戸川乱歩さんの作品に関われて。僕はすごく光栄だなと思っていました」。
さらに宮田さんも「やはり読んだ時は、癖が強いんで。本当に変態だな、と思ったのが正直な印象でした。それはどの台本もそうだと思うんですが、キャラクターを理解するということがかなり困難であるなと思っていて。それはなかなか難しかったですね」と振り返りました。
そんな舞台あいさつも時間切れ。最後のあいさつを求められた『3つのグノシエンヌ』のウエダ監督は「この後、『3つのグノシエンヌ』を皆さんにはじめて観ていただくことになります。この企画は、3つの作品で『RAMPO WORLD』ですので、この『3つのグノシエンヌ』を気に入っていただいた方も、そうじゃない方もぜひ。続いて公開される『蟲』も『白昼夢』もめちゃくちゃ面白い映画なので。コンプリートしていただけたらなと。公開はまだ1か月先なので、これからSNSなんかで、今日の感想なんかも含めて、一緒に盛り上げていっていただければ」とコメント。
松田さんも「『3つのグノシエンヌ』には、江戸川乱歩の『一人二役』という原案がありまして。そこに監督の思いをこめて、『3つのグノシエンヌ』というタイトルがつけられました。皆さんにこれからご覧いただいて、どういったものを感じていただけるのか、僕らもすごく楽しみにしています。ここから江戸川乱歩とか、エリック・サティとか、実話などをひもとき、その世界に踏み込んでいくと、この映画の中からさらなる面白みがありますし、映画を観て、答え合わせができるようなこともちりばめられています。そういったことも含めて、この江戸川乱歩没後60周年企画というものが今の世の中に必要だと思いましたし、この企画は今生まれるべき時なんじゃないかと思いました」と語ると、「先ほど監督もおっしゃっていましたが、自分たちのこの作品を、『3つのグノシエンヌ』、そして『蟲』、『白昼夢』と、熱を落とさずに見続けていただいて。SNSなどでより盛り上げていただけたらなと思います」とメッセージ。
・10.3(金)公開『3つのグノシエンヌ』予告編
https://www.youtube.com/watch?v=cB6q6tm9UKU
さらに『蟲』の平波監督は「江戸川乱歩の原作といえば、パブリックイメージとして猟奇的だったり、アブノーマルな部分がフューチャーされていますし、そういう印象を持たれがちだと思うんです。そして僕もそういう世界観は好きで、今回監督させていただくにあたって、そういった物語を再構築していったんですが、そういう中で、先ほど申し上げたようなイメージだけでなく、その中でどう人間を見つめてるのか。そういう部分をひもとく作業になりました。そしてそこに演者という身体性が加わると、僕は本当にこの子たちがかわいくてしょうがなくなった、というか。人間って本当に愚かだけど、本当にかわいくて愛おしいんだな、と。そういう思いを最終的にこの作品に込めたつもりです。この『3つのグノシエンヌ』も『白昼夢』も『蟲』も、これは乱歩の本当に一端かもしれないですけど、江戸川乱歩先生の偉大な軌跡に触れていただけたら、我々も幸せです」。
そして平埜さんも「この『蟲』という作品は本当に愛の詰まった作品だと思っていて。江戸川乱歩の愛はもちろんですが、それにも増して平波監督の映画に対する愛が本当に詰まっています。今日この舞台上にいる役者、監督だけでなく、本当に多くの共演者、スタッフの皆さまのエネルギー、情熱が詰まった作品に仕上がったと思っております。大きな愛というのはなかなか厄介なもので、その裏側にはある種の変態性みたいなものもあります。そしてそれは皆さんもお心当たりがあると思うんですが、ある種の変態性があるなと思っておりまして。そんな愛と変態というエンターテインメントを楽しんでいただけたら」。
・10.17(金)公開『蟲』予告編
https://www.youtube.com/watch?v=dvvyUUezTpo
さらに『白昼夢』の山城監督が「この3作品そうだと思うんですが、事実は小説より奇なり、という言葉もあるように、うそのような、奇妙な出来事は世の中で実際に起こっていて。そうしたことが(現実でも)ギリギリ起こるんじゃないかと。そうした感触みたいなものが、この3作品にはあると思っています。現実の方が恐ろしいことが起きていますし、それを映画にするととても奇妙で。本当に起こるのだろうかと思うんですが、そのギリギリの何かを『白昼夢』に乗せられたらと思いましたし、それを捉えたいなと思い、制作しました。どうか3作品の宣伝をよろしくお願いします」。
さらに見津さんも「今回の『RAMPO WORLD』という企画においては、おそらく僕が小さい頃に感じていた乱歩へのイメージが。それは先ほど皆さんがおっしゃっていた通り、猟奇的な部分だったり、アブノーマルさみたいなところが、どうしても前に出てくると思うんですけど、それがこうしてインターネットが普及してきた時代において、わりとそれに近しいことが現実でも起きてきてしまっているというか、起こりうるなと思っていて。今だからこそ、乱歩作品って皆さんにとって親和性があるんじゃないか。それが今回の『RAMPO WORLD』としての企画でもありますし、そんな中でも『白昼夢』はのぞく、ということがテーマになっているんですけど、そこで一番描きたい物というのはきっと3作品一緒で。それは人間らしさ、人の本質というところだと思うので、そういうところに注目して見ていただけたらうれしいです」と会場に呼びかけ舞台挨拶は幕を下ろしました。
・10.31(金)公開『白昼夢』予告編
https://www.youtube.com/watch?v=yZgaC2eKgZo
「RAMPO WORLD」作品情報
【作品情報】
<INTRODUCTION>
本格推理小説や怪奇・幻想小説の祖として後世に名を残した作家・江戸川乱歩。数々の推理小説を世に送り出す一方で、「人間椅子」「鏡地獄」など、怪奇、妄想、フェティシズム、狂気を滲ませた変格ものと称される作品も多く執筆している。今年没後60年を迎える江戸川乱歩の3作品を、「RAMPO WORLD」と題して長編映画化。晩秋の夜に、妖しくも美しい乱歩の世界へと誘う―。
公式X:@RAMPOWORLD https://x.com/RAMPOWORLD
公式Instagram:@rampoworld https://www.instagram.com/rampoworld/
作品名:『3つのグノシエンヌ』
公開表記:10月3日(金) シネマート新宿、池袋シネマ・ロサ他ロードショー
監督・脚本・編集:ウエダアツシ
出演:松田凌 安野澄 岩男海史 前迫莉亜
岡本照磨 四家光葵 月石しのぶ 富樫 明 佐田川舞
原案:「一人二役」江戸川乱歩
(C)2025「3つのグノシエンヌ」パートナーズ
HP:gnossiennes-movie.com
<STORY>
小劇場の売れない役者・哲郎と、教師として働く妻・晴との仲は冷え切っていた。愛人の茉莉との逢瀬も、哲郎の欲望を満たすことは無かった。刺激に飢えた哲郎は、新たな舞台の脚本を進める中で、後輩役者の悠介にある話を持ち掛ける。それは、舞台の主役に抜擢することと引き換えに、悠介が架空の人物に成りすまし、晴を口説き落とすというものだった。哲郎はその様子を脚本のネタにしようとしていた。最初は気が進まなかった悠介だったが、晴と触れ合うにつれて芝居と現実の狭間で心が揺れ動いていく。一方で哲郎は、自分には見せない晴の素顔を見て激しく動揺するが―。
作品名:『蟲』
公開表記:10月17日(金) シネマート新宿、池袋シネマ・ロサ他ロードショー
監督・脚本:平波亘
出演:平埜生成 佐藤里菜 木口健太 北原帆夏 / 山田キヌヲ
細川佳央 橋野純平 中山求一郎
原案:「蟲」江戸川乱歩
(C)2025「蟲」パートナーズ
HP:mushi-movie.com
<STORY>
映画監督の柾木は、親の遺産を食い潰しながら引きこもり続けて10年になる。極端に人との接触を嫌う柾木を気に掛ける大学時代からの友人・池内は、刺激を与えようと小劇場の舞台へと連れ出すが、柾木は居酒屋で酒をあおりながら厳しい論評を繰り返すばかりだった。しかし、そこに出演女優の芙蓉が現れると、その反応が一変する。柾木の演技論を熱心に聞く芙蓉に心を動かされ、創作意欲が湧き出してきた柾木は、彼女を主役にした脚本を書き始める。その想いの空回りが、次第に狂気を孕んで、誰も想像だにしない歪んだ愛の物語を奏ではじめる―。
作品名:『白昼夢』
公開表記:10月31日(金) シネマート新宿、池袋シネマ・ロサ他ロードショー
監督:山城達郎 脚本:川﨑龍太
出演:見津賢 上脇結友 宮田佳典 / ほたる 川瀬陽太
佐々江天真 月石しのぶ 前田龍平 田川恵美子 小川沙羅 小野寛幸 大迫一平
原案:「白昼夢」「湖畔亭事件」江戸川乱歩
(C)2025「白昼夢」パートナーズ
HP:hakuchumu-movie.com
<STORY>
塾講師の渡会には、誰にも言えないある病癖があった。それは、人前で決して見せることのない顔を覗き見た時、この上ない快感を得るというものだった。そんな渡会が済むマンションの階下に、真柄夫妻が越して来たのは今年の春のことだった。
渡会は、夫妻が済む部屋に覗き穴を作り、その生活を覗き見るのが日課となっていた。妻の華恵は大学の准教授となり出世する一方で、夫の太郎は非常勤講師として働いているようだが、夫婦仲は悪くないようだった。しかしある日、渡会がいつものように階下の様子を覗き見る中で、華恵の知らなかった太郎の秘密が明らかになる―。
【配給】アルバトロス・フィルム