山梨のソウルフード、ほうとうでいってみよう
山梨県民のソウルフード、ほうとう。
残念ながら「ほうとうって煮込みうどんだよね」「いや具の多いきしめんでしょ」など、山梨県民以外にはあまり正しく理解されていない郷土料理です。煮込みうどんはあながち間違っていないし、きしめんとめんの形状も似ているので、そう思われても無理ないかもしれません。
そもそもほうとうってどんな料理でしょう?
農林水産省HP「子どもの食育」によると、ほうとうは以下のように紹介されています。
煮込んだめんと野菜がまじりあったおいしさ
山梨県の山間部では米作りがむずかしく、蚕(かいこ)を飼って絹糸をとることで暮らしていました。蚕のえさとなる桑(くわ)を作り、桑の収穫が終わったあとは、麦を栽培しました。収穫した麦をめんにして、季節の野菜といっしょにみそで煮こんで食べたのがほうとうです。戦国時代(せんごくじだい)の武将(ぶしょう)、武田信玄(たけだしんげん)が自分の刀で食材を切ったことから「宝刀(ほうとう)」と名付けられたという説もあります。
食材豆知識
「ほうとう」に使うめんはうどんと違って、めんを打ったあとねかさずにすぐに切って煮こみます。そのため煮くずれしやすく、汁にとろみがつきますが、煮くずれしためんがみそとまじりあった味が、「ほうとう」のおいしさなのです。使う野菜に決まりはありませんが、カボチャを入れて作ることが多いです。
おお、武田信玄調理補助説もあるのですね! 勉強になりました。ちなみに漢字にカッコでルビがふってあるのは、子どもも読めるようにする配慮でしょう。
うどんは寝かせれば寝かせるほどコシが出るといいますが、ほうとうにとってコシは不要なもの。煮くずれするところが魅力なんですからね。
じゃあ作ってみましょうか!
スーパーに行くと、数種類のきしめんの隙間に1種類だけほうとうが売っていました。具はレシピによってさまざまですが、やはりかぼちゃは外せないようです。
今回は大根、ほうれんそう、にんじん、ひらたけ、しいたけ、玉ねぎ(家にあった使いかけ)、写真を撮り忘れた長ねぎと豚肉、そしてかぼちゃを用意しました。基本、家にある野菜はなんでも投入可能です。油揚げがあってもよさそうですね。
ゆでる前のほうとうはこんな感じ。2人前です。なんとスープも入っていました。
このほうとうの作り方を見ると「水が沸騰したらお好みの具材を入れひと煮立ちさせ、めんを入れて約8分煮込み、つゆを加えてさらに2分煮込んでできあがり」とあります。
うわ! 具が多すぎて何が何だか。鎮まれほうれん草!
よかった、落ち着いてきました。
めんも加えて8分煮込み、スープを入れる直前。おお、いい感じです!
ほうとうの完成です! 2人分とは思えないボリューム!
熱すぎて食べられないので、茶碗サイズの丼に入れてみました。
今回は豚肉を入れてみましたが鶏肉のレシピもありますし、野菜のみのレシピもありました。検索すると里芋、じゃがいも、はくさい、厚揚げ、ごぼうなどが入ったほうとうもあるので、具は本当に自由度高いですね。きっと最後に卵を落としてもおいしいと思います。
武骨なめんがいい仕事をしてくれます。喉ごしとは無縁の、つやとか照りとも無縁の、けれど慈愛あふれる素朴な味わい。
ちなみにスープを手作りする場合は、だし+みそ、レシピによってはみりんや塩も少々。だしとみそ……そう、味噌汁です。ほうとうのスープはとろみのある味噌汁なのです。
味噌汁は「うわあ、なんというおいしさだ!」と感激するものでないとしても、毎日飲んでも飽きることはありません。ほうとうもそういう一品だと思います。ベースの味は同じでも、入れる具によって無限のアレンジができます。
ほうとう、もっと人気が出てもいい実力の持ち主だと思います。なんてったってベースが味噌汁ですからね。しかも野菜もたくさんとれるし、冷蔵庫の野菜室も整理できます。
今日は鍋だなと思ったときは、ほうとうを思い出してください。
ほうとうですよ!
最後に、正しいほうとうの姿をご紹介します。お店ならこんな感じのほうとうが食べられます。
写真提供:やまなし観光推進機構
書いた人:
椿あきら
猫の下僕をしているライターです。猫と暮らすようになってから、断然家飲み派になりました