【大食い女王】もえのあずきに神様がプレゼントしたもの【美少女アイドル】
もえのあずき。
テレビの大食い番組で彼女の小気味いい食べっぷりに感嘆した人も多いはず。
テレビ東京の『元祖! 大食い王決定戦 新爆食女王襲名戦』にて優勝、第五代目爆食女王となり、一躍大食い界に躍り出たシンデレラガールです。
彼女が所属するアイドルグループ「バクステ外神田一丁目」のステージ常設カフェである「AKIHABARAバックステージpass」は秋葉原のいい立地にあるのですが、ワンブロック隣に「ごはん処あだち」があります。普通の定食もおいしいけど、常軌を逸した大盛りで有名な昔ながらの定食屋です。
大食い女王「もえあず」のインタビュー場所としては最適な場所です。
今回はおいしい定食をゆっくり食べてもらいながらお話をうかがう予定なんです。
「あだち」の定食のなにがヤバいかって、
一升メシが「普通盛り」なんですよ。
そして「あだち」の大将に言われるがままにその普通盛り、つまり一升メシを普通にチョイスするもえあず。
一升のご飯というと重量で言えば3.25キロだけど、ここは大将の経験と目分量とのこと。「店主が相手を見て判断する」と書いてある張り紙がいろんなことを物語るじゃないですか。
さあ、大将が定食を持って登場です!
お腹の中の王子様
──食べきるコツってあるんですか。
「企業秘密になるかわかりませんが、ジャイアント白田(白田信幸:元フードファイター、タレント、実業家)さんが、先に食物繊維から食べるって言ってました」
──意外とダイエットのコツみたいですね。お腹の調子が整うとか、そういう感じですか。
「わかんないですけど、食べてる途中ですぐに腸に行ったほうがいいらしくて。私は、お腹の中に王子様がいて、食べてくれるんですよ。だから詳しくはわからないです。ふだんはお腹のなかで眠ってる王子様を起こして、王子様と一緒に楽しく食べるのがコツです」
──今日は王子様の調子が悪いなって時はありますか。
「なかなか起きてくれない時はあります。それでもつらいって時はないです。食べるの大好きなんで、幸せです(キッパリ)」
あだちランチセット(880円)
──いつからこんなふうに食べれるってわかったんですか。つまり、自分が大食いなんだって自覚したのは。
「おととしくらいです。ほかの人より食べられるってのはうすうすわかってたんですけど、私みたいな人がほかにもいっぱいいると思ってて」
──そうですよね、それにもえあずさんちは家族みんな食べるらしい、という噂もありますしね。それじゃ自分では気がつかないですよね。
「女の子はみんなホントはもっと食べられるけど、ぶりっ子してるだけなんだと思ってて。うふふ」
もえあずは「バクステ外神田一丁目」加入後1年くらいのころ、東京MXテレビの『つんつべ♂』という番組内のアイドルの大食い企画に出演。そこでの大食いっぷりをつんく♂さんに認められたのを期に本家の大食い番組への挑戦を始めたのです。
「フォアグラがめっちゃ好きで」
「それまでも食べることは好きだったんですけど、大食いにチャレンジしようって気持ちはなかったんです。自分が食べられる方なのかどうかわからなくて、大食いしようって気持ちにすらならなかったんです。でも、学校の近くにすごい山盛りのお店があって、そこにはよく友達と行ってました」
──それはイベント的に、それとも必要だから?
「えっと、ただ自分が食べたいから(笑)。そこは、カツ丼が有名で、でもほかのメニューもぜんぶ大盛りで。大盛りのカツ丼食べたりとか」
──女子大生が大盛りカツ丼を!なるほど、自覚はないけどたくさん食べる子だったんですね。だいたいの男性は大食いの女の子が好きなんですけど、そういう意味で、モテましたか。
「んんー。ここまで食べるってことを隠してたんで。でも、なんかみんなで食べに行く時とかには、誘われてました。あと、よく食べ物をもらいました。あれ、言い方ヘンだな?(笑) “これおいしいよー”って男の子からもらったりとか」
──これは「あいつにあげると喜ぶな」って思われてたんですね。大食いとか関係なしに食べ物の好き嫌いってありますか。
「ないです。好きなものはいっぱいあるんですけど」
──じゃあ逆に言うとテレビ番組の『食わず嫌い王』には出演しにくいという。
「出ることになったらどうしようって思います」
──これおいしかったーってのありますか。大食いというか、人生の食の思い出的な、大きい枠で。
「えー? しょっちゅうおいしいもので感動するから、なんだろう。……フォアグラがめっちゃ好きで」
──「フォアグラが好き」。あまり聞かない言葉ですよ!
「そうですかー(笑)? フォアグラが好きで、いっぱい食べたいなーと思ってて。いっこだけ、フォアグラ食べ放題のお店を見つけて。そこでは感動しました。鉄板で焼いてくれるんですよ。フォアグラの前に行くたびに20枚くらい焼いてくれて。おかわりしたらまた20枚とか。うふふ。そんなに高くなかったですよ。3~4千円くらい」
インタビューでしっかり話しながらも一升メシはどんどん食べ進められていきます。印象的なのは、彼女がよく噛んで食べていること。もぐもぐ頬張る姿は、愛らしさと大食い女王の凛々しさとが同居する、すごく不思議な光景なのでした。
もう二度と食べたくないものは?
──あごは疲れたりしますか。
「疲れますー(笑)。あとは、試合は男性ともしたりするから、そもそも骨格も違うし、アゴのちからで負けちゃったりします」
──咀嚼力でね。男女は歯並びが違うと言いますしね。いやあ、それにしてもモリモリ食べて気持ちいいですね。嫌いなものは無いんですよね。
「もう二度と食べたくないのは、タガメ? の素揚げ? バクステのバラエティのステージみたいな企画で食べました(笑)。味わえないくらい気持ち悪かった。見た目でダメでした。海外では臭豆腐とかドリアンとか食べたんですけど、それはめっちゃおいしくて好きでした」
──じゃあニオイが臭いものとかはあまり関係なくて、わりと見た目なんですね。昆虫はぜんぶダメ?
「あと、生きたままの、踊り食い? それが苦手ってことが最近わかりました」
──なんか飲んだんですか、ドジョウとか。
「甘エビかな。ちっちゃいエビ。食べたらおいしかったんですが、食べるまでめっちゃ時間かかりました」
食べ物に好き嫌いはないけれど、見た目が気持ち悪いものや生きて動くものはダメらしいです。大食いの試合では鋭い眼光とド根性を見せるかっこいい彼女ですが、ここらへんはわれわれと一緒なんですね。
休みの日はずっと食べちゃってキリがない
──ご自分で料理はされるんですか。
「料理はたまにします。たくさん作ります。おうちに一升炊きがあるんですけど(一同爆笑)。テレビほどは食べないですけど(笑)。でも一升とか普通に食べちゃいます」
──ええ? 一食で、一升? 一升食べるだけのおかずって、相当な量必要じゃないですか。
「なんだろう、いろいろ作るときもあれば、最近は面倒くさくて買ってきたりします」
──一升メシだと、たとえばレトルトカレーなら何個必要なんでしょうね。想像がつかない。
「たぶんルーが3キロくらいあれば……」
──そんな普通の顔して「キロ」って言われても(笑)。ひと袋250グラムだとして。
「12袋くらい? うふふ」
──(かるくビビりながら)おうちの冷蔵庫は、大きいんですか。
「ひとり暮らしだけど、ファミリータイプの冷蔵庫を使ってます。中身は、あるとぜんぶ食べちゃうんで。スカスカしてますね。うふふ」
──食べる量が多いから、いったん食べはじめたら食事の時間が長くなりますよね。オフの日ってどうしてるんですか。
「ずっと食べちゃうから、そうならないようにお買い物行ったり、ジム行ったり。キリがないから。あとは、夜にお友だちと約束して、それを楽しみにしてあまり食べないようにします」
──キリがないというのがすごいです。みんなから言われると思うんですけど、太らないのが不思議ですよね。
「でも、普段はジムとか行きます。最近は忙しくてそんなに行けないんですけど、週3くらい。ボクササイズとかやります」
──ぱっと思ったんですけど、ひょっとしてお風呂長いんじゃないですか。
「あー、お風呂、すっごく長いですね。毎日絶対つかります。汗もめっちゃかきます。いまも、汗かいてて」
──やはり代謝よさそうですよね。でも顔には汗かかないですね。そこがプロっぽい。
「そうなんです、プロプロです(笑)。代謝はめっちゃいいです」
──脚とかすごく細いですもんね。これまでに太ったことってありますか。
「地味に、太ったり痩せたりしてます。1ヶ月範囲で5キロくらい変わります」
──中学生の時はこんなだったとか、年齢によって太ったり痩せたりってのはなくて、基本的に細いまんまなんですか。
「というより、いま……」
──ああ、いまが人生で一番大きい時期で。
「歌手活動の仕事とかが多い時はすごく痩せて、こういうタレントとして大食いの仕事が多くなると、大っきくなる。自分で写メとか見るとすぐわかります」
やはり大食いができる人は、一般人とは違う視点で食べ物を見ているようです。おかずの量をキロ単位で考えるのは大食いの人だけです。アイドルの彼女はもちろんかわいいのですが、やはり本物の大食い女子なんだなあ、とわかることがときどき出てきます。
よく噛んだらすき間が小さくなるんで
──急ぐときは噛みますか? 噛んだほうが消化が良いとか。たくさん食べられるとか。
「噛みます噛みます。大食いの試合とかになると、噛むのはあれなんですけど、ちゃんと噛みましょうって気持ちで食べてるんで。なんかテトリスみたいな感じで。こうなってたらここにすき間ができちゃうじゃないですか(定食の唐揚げをつかって説明:大きな唐揚げを積み上げると、唐揚げ同士の空間が大きくなる)よく噛んだらすき間が小さくなるんで、よく噛んで食べます」
──すげえ、見えてる地平が違う! 詰め込むために噛むんですね。いや歯並びがきれいなんでよく噛むなあと。
「ありがとうございます、えへへ!」
──歯が命って、アイドル的にもそうですし、食べることでもそうですね。ひょっとして虫歯の状態で食べる仕事ってありましたか。
「虫歯でってのはないんですけど、親知らずを抜いた次の日にロケだったことがあって。めっちゃ痛かったです。えへへ」
──それは無理だ! 歯茎に糸が入ってても大食いしちゃうんだ。あの、根源的な質問なんですけど。ただたくさん食べる仕事と、勝負ですって仕事とどっちが好きですか。
「最初は試合が嫌いだったんです。“争って食べるなんて”って思ってたんですけど。大食いを始めてから性格が変わったのか、負けず嫌いになって。気持ちを切り替えるようになりました。……(ナスの天ぷらを持ち)あー、なすびだー」
──醤油もソースもありますからね。あ、イカリソースだ。関東では珍しいですね。
「あ、そっか。私、関西出身だからめちゃ馴染みあります」
──あ、いま急に言葉が。「なじみあります」って関西の訛りに。
「訛ってました? あははは! 『いかりスーパー』ってこっちには無いんですか」
関西生まれのもえあず。普段は標準語で話しているけれど、ふとしたときに関西イントネーションが出てくるのです。
大食いを始めてからわかったこと
──大食いの番組で、食べてる途中で立ったりジャンプしたりして、「落とす」ってやってるじゃないですか。胃から下に食べ物を落とすという。あの感覚って本当にあるんですか? 今日は大食いしてる本人に会えるチャンスなんで、絶対に訊いておこうと思って。
「ありますね。立ったり。わたしは踊ったりして。すると、すき間ができたなっていう感じ。胃から腸に行ったなって感じですね」
──胃の中身がわかる境地があるんですね。その感覚は前からありましたか。
「大食いの大会とかに出るようになってからわかるようになりましたね。それまでワ~って食べたことがなかったんで、わかんなかったです」
大食いの人にとって、秋葉原の「ごはん処あだち」は注目の場所らしい。横で聞いていた大将もまた大食いにお詳しく、こんなお話をしてくれた。
大将「みなさん言うけど、ご飯ってのはキツいらしいね。ラーメン、カレーはルーがあるから。大食いの人は『飲み物』って言うでしょ。でも、ご飯はちゃんと噛むからキツいんだって。同じ量なら絶対ご飯のほうがキツいんだって。だけど、うちはコシヒカリ使ってるからおいしいよ。こういうことはあまり言わないけど、食べ放題の店ってのは大味なんだよね。うちは新潟出身だから。食べ放題の店にしてはご飯がおいしいから」
神さまからのプレゼント
──今日はどのおかずがおいしいですか。
「どれもおいしいです。唐揚げはもちろんおいしいし、お茄子もおいしいし、あとは玉子焼きが甘くて好きです。甘いのが好きなんです」
──小さいころから甘い玉子焼きだったんですね。学校ではお弁当を持っていく機会があったと思いますが。
「お弁当箱だと、ちっちゃくて。でもそれを早弁して、あとで食堂行ったりしてました」
──量ではなく数を食べたんですね。
「あと学校が外に出てもよくて、休み時間とかに近くに食べに行ったり」
──小さいころはどんな子でしたか。
「やっぱ目立ちたがり屋でした。前に出てなんかしたりとか。学芸会では白雪姫の白雪姫をやりました。そのクラスが目立ちたがりがあまりいないのもあって“まあ、もえあずだろう”的な感じになって、うふふ、すんなりいきました」
──わりと仲良しクラスというか、周りから立てられる存在だったみたいですね。
「そうですね、うふふ。なんか、学校がすっごいゆとりというか。ゆとり世代の始まりで、校則もなんもなくて、いままで生きてきていじめとかも見たことなくて。テレビの世界やと思ってました。ドラマの中だからいじめとか言ってるんであって、そんなことホントにあるのかと思いました」
──そんなこんなですくすくと育ってきた目立ちたがりのもえあずさんですが、アイドルになろうと思ったタイミングというか、きっかけは?
「昔からなりたくて。絶対なりたいって思ったのは、モーニング娘。さんの、後藤真希さんが出てきたころで。中学生くらいのとき。それでも、なんか自然に薄れてきて。普通に高校生活を送って。で、大学を卒業したときにバクステの募集を見て“やっぱりやりたいな”と」
──中学生のときにモー娘。を見てアイドルになりたいと強く思い、すーっと薄れて、それで大学卒業してまたやりたいと思ったと。はああ。タイミングが合ってというか、よかったですねえ。
「うふふ、そうなんです。募集を見たときに運命を感じたんです。“これで人生変わるんじゃないかな”って。変わりました、ホントに」
──それもただアイドルじゃなくて大食いのアイドルということで。
「でも、いま世の中にアイドルさんはいっぱいいるから……私、大食いが出来て本当に良かったです(一同爆笑)。そうじゃないとテレビに出られないと思うし。神さまからのプレゼントみたいな」
食べる才能は神様からのプレゼント。まさに「ギフト」です。
いまはアイドルグループが群雄割拠していて、それぞれがポジション獲得に必死。アイドル戦国時代なんて言い方もあるくらいです。そしてグループ内でも序列がつき、スポーツでいうとスタメンと補欠の位置をめぐってメンバー個人も人気獲得やキャラの立て方などに努力が必要な時代です。
そんな過酷なアイドルサバイバルの時代にあって、大食いという才能を神に授けられ、あこがれのモー娘。生みの親であるつんく♂さんにその才能を見出されて背中を押してもらい、みずからの才能と恩人の言葉を信じて戦いの舞台に赴き、負けても諦めずに何度も戦って、自分の居場所を勝ち取った。
もえのあずきは、そんな女の子なんですよね。
ご飯食べてアイス食べたらまたお腹空いてます
──ところで食べ過ぎたときの回復はどうですか。われわれの場合は翌朝は食べたくないくらいになるんですけど。
「それはないですね、うふふ。寝たらお腹空くんで」
──ちょっと天才肌すぎる発言です。もう一回お願いします。
「あははは。一回寝たらお腹空いてます。あと、ご飯食べて、アイス食べたらまたお腹空いてます、うふふ。もう一回食べたいなってなります。甘いのと辛いのがプラマイゼロになって。テレビでオンエアしないけど、デカ盛り食べてる途中でアイスを食べたりします。そしたら完食できる。試合のときは無理ですけど」
──うわあ、それじゃ試合って本当につらいんですね。
「そうなんです、味がずっと同じなんで」
と、この時点でついにおかずを食べきったもえあず。ただ、ごはんはまだかなりの量が残っている状態です。
──ご飯が残って、おかずがない。実際、こういうシチュエーションってあると思うんですよ。そういうときってどうしますか。
「あたしは、生卵とか。卵かけご飯にしたらいっぱいいけます」
──なるほど。白ご飯好きでしょ。
「大好きです。わかりますか?」
──わかりますねー。うどんと白ご飯だとどっちが好きですか、関西人的に。
「ああー悩みますね。でも、こっちの黒いスープのおうどんはまだ食べれないです。気持ちの問題なんですけど。麺だけなら食べられるけど(笑)。ああ、おかず欲しい。食べきりたい。おとうさーん、なんかおかず足したーい」
大将「揚げ物じゃしつこいから、茄子味噌とかにしますか」
「ああー、茄子味噌食べたいです!」
一同、彼女の食事量にあらためて驚きました。
食べ始めからここまで40分くらい。しかも話しながらです。
いやはや、すごい速度!
肉の脂身が取り合いになる
──大食いには、ご飯系とスイーツ系があると思いますが、どっちがお得意ですか。
「ご飯系のほうが多く食べれるかも。デザートも好きなんですけど。こないだパフェのデカ盛り食べまして。冷たいのをたくさん食べるとなんか寒いのと、あと急に甘いの食べすぎると頭おかしくなるらしくて。それが怖いですね」
もえあずが「頭おかしくなる」と言っているのはシュガーラッシュと呼ばれる現象。甘いもので急に上昇した血糖値をインシュリンが下げようとするけれども、血糖値の下がり過ぎもまた危険なのでアドレナリンが分泌されて血糖値を上昇させようとします。そのアドレナリンの影響で興奮状態になることがあります。
「それでもケーキは15分で3ホールくらい」
──お、おう……。つまりケーキ1ホールを5分で?
「ぺろりでした(笑)」
──クリームがつらいとかもないんですか。だって脂じゃないですか。
「それくらいなら大丈夫です。うふふ。なんか、脂っこいほうが食べやすいというか。噛まなくても、喉ごしがいいみたいな」
──うわあ、今日はわからない境地がいっぱい聞けるな。量を食べないとその感覚はわからないですもんね。
「あははは! 普通は、お肉とかも赤身のほうが食べられるじゃないですかって言われるんですけど、霜降りのほうがガツンと食べられます。大食いの人はそういう人が多いんですよ。大食いの人同士で焼肉とかを食べに行くと、脂身の取り合いです。ケーキも『クリームクリーム』って取り合いです。そうですね、パフェみたいな冷たいものは、3キロ4キロなら、まあ大丈夫です」
──な……なんか単位が普通の感覚とは違いますね。
「うふふふ。パフェは、4キロを超えるあたりからつらくなりますね。寒さとか、ボーッとしたりとか。でも3キロあたりまではご飯よりも楽なんです」
──もえのさんくらいになると、たいていのデカ盛りのものを見てももう驚かないんじゃないですか。これとかは『メシ通』で取材した名古屋のラーメンなんですけど、このサイズですよ(と、スマホで『メシ通』の「名古屋デカ盛り列伝」の記事を見せる)。
「あ! ラーメンですね。食べたいです! いけると思います。えーと麺が2.25キロくらいで……?ちょっとくわしく見てもいいですか」
──すごい、見てるところが違う(笑)。大雑把には見ないんですね。麺が何キロ、野菜がどのくらいと。
「そうなんです。食べてみたら『アレ? 無理かな?』ってこともあるんで。でも、記事には10人クリアしてるって書いてあるから……いけます。人間でクリアしてる人がいるなら、いけると思います」
──(ひるみながら)それじゃ、こちらのメニューはどうですか?(……と、さらに『メシ通』の記事を見せる)
「やきそばですね……豚肉だけでも200グラム……特盛が麺6玉ぶんから7玉ぶんですか……。これも完食されている方がいらっしゃるんですよね?
いけると思います」
食べ物の量を重さで正確に知ろうとする。飲み込みやすいという理由で脂や油はむしろウェルカム。積極的な味替えで食べきる術を知っている。食べたものが胃から小腸へ移動したことを感知できる。詰め込むためによく噛む。
大食いの人たちがわれわれとは違ったレイヤーで食べ物を見ていることにどんどん気付かされます。
職人が常人とは違った精度で工作物を見ているように、アスリートが自分の体調を微細なレベルで把握しているように、大食いの人は食べ物にしっかりと向かい合います。
そんなこんなしていると、お待ちかねの追加おかず、茄子味噌(ランチセットで880円)がやってきました。
人を幸せにする仕事
「わー、茄子味噌おいしそう! ここのお店、前から来たかったんですよ。バクステからも近いし。ちょっと覗いたこともあったんですけど、女の子だから入りにくいかなと思っちゃってて」
大将「ちょっとね、居酒屋みたく見えちゃうからね。ウチの味噌味は、人気ありますよ」
「めっちゃ味染みこんでる。おいしい。でも熱ーい」
熱々の茄子味噌にふうふうと息をかけて冷ましながらパクパクとご飯を胃の中に放り込み、最後に茄子味噌をご飯にかけて食べるもえあず。お米を残したくない気持ちが見えます。育ちの良さを感じます。
そしてついに1時間で完食。今回の取材は大喰いチャレンジじゃないから、無理して全部食べなくていい、残していいと言ったのに、自由意志で完食。そして食べた後の器もきれいなんですよ。
大将「世の中にいっぱい食べる人はいるけど、普通は時間がかかる。1時間半かかったとかね。そこいくと、やっぱり早い! 噂には聞いてたけど、さすがだね」
「おいしかったです、ほんとに。唐揚げおいしかったです。また来ますー!」
おいしそうに食べる姿は周りの人を幸せにします。
たくさん食べてくれると気持ちいいし、うれしいものです。
歌や踊りでファンを喜ばせるだけがアイドルではありません。
アイドルの役割が人を幸せにすることであるならば、天から与えられた大食いの才能を他人の幸福のために使い続ける彼女もえのあずきは、まさにアイドルにふさわしい存在ではないでしょうか。
そして、彼女が諦めずに戦って大食いアイドルになったことは、それはとても美しいことだと思うのです。
撮影:川しまゆうこ
お店情報
バクステ外神田一丁目 AKIHABARAバックステージpass
ウェブサイト:http://backst.jp/
ごはん処あだち
住所:東京都千代田区外神田
電話番号:03-3253-3017
営業時間:[月〜金]11:30~15:00・17:00〜23:30 [土・日]11:30~15:00
定休日:基本的になし(祭りのときは休み)
ウェブサイト:http://www.hotpepper.jp/strJ000115745/
書いた人:
鷲谷憲樹
43歳フリー編集者。ライフハック系の書籍編集、専門学校講師、映像作品のレビュアー、社団法人系の広報誌デザイン、カードゲーム「中二病ポーカー」エバンジェリストなど落ち着かない経歴を持つ器用貧乏。 好きなおかずは唐揚げ。好きなアイドルはBABYMETAL。
Twitter:@nwashy