人を斬るケモノ……BSP『新選組』土方歳三の葛藤や沖田総司の純愛など4人の隊士で描く[動画レポ]
劇団ひまわりのプロダクション部門、ブルーシャトルプロデュース(BSP)の最新作『新選組』が12月15日より公演中。近藤勇、芹沢鴨、土方歳三、沖田総司の4人の隊士をメインに、それぞれを主人公においた4話構成で描きます。
<暁ノ章>では「近藤勇の大志」「芹沢鴨の後悔」の2話を、<宵ノ章>では「土方歳三の憂鬱」「沖田総司の純愛」の2話を上演。それぞれ完結した物語となっていますが、<暁ノ章>を観てから<宵ノ章>を観る流れがベスト。今回は「宵ノ章」を動画付きでレポートします。
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物語は、新選組の結成から、新選組の名を全国に知らしめた「池田屋事件」までの軌跡を描き、4話すべてを観ることで、異なる主人公からの新選組の新たな視点で、より一層物語を楽しむことが出来るんです!
近藤勇役には、USJのワンピースショーでルフィ役を務めた山本誠大さん、芹沢鴨役には、安定した舞台出演で活躍中の田渕法明さん、土方歳三役には、舞台『プリンス・オブ・ストライド』の黛遊馬役や次回の舞台『ハイキュー!!』で菅原孝支役を務める田中尚輝さん、沖田総司役には、ミュージカル『忍たま乱太郎』の立花仙蔵役や舞台『プリンス・オブ・ストライド』の鴨田慶役で活躍する鐘ヶ江洸さんが務めます。
また、新選組の物語ですが陰の立役者として存在感を放つのが、長州藩士の吉田稔麿。吉田稔麿を演じるのは、ミュージカル『薄桜鬼』の土方歳三、『仮面ライダー鎧武』のザックなどを演じた松田岳さん。
人を斬るケモノという側面
<宵ノ章>では、土方歳三の人を斬ることへの迷いや苦悩、沖田総司の切ない恋、そしてさまざまな思いを乗り越え、覚悟を決めた「池田屋事件」へと展開。
前半と後半で主人公が土方から沖田へ変わることで異なる物語が展開されますが、同じ時系列の部分もあり、前半で登場したシーンが後半で違う角度から再現されるなど、同じ時間に生きている隊士たちを描いていることがわかります。
土方役の田中さんが「<暁ノ章>では、土方はすごく違和感のある動きをたくさんするんです。それが、<宵ノ章>を観ていただくと『これか!』と気分爽快に謎が解けると思います(笑)」と語るように、各話にリンクしている部分があるのが面白い。
殺陣やセリフで心情を表現するだけでなく、巧みな演出で惹き込むエンターテインメント作品となっている本作。
特に前半の土方篇では、「新選組」を守るためには仲間の命までも犠牲にする、強く真っ直ぐに思う故に人を斬るケモノになってゆく……、その姿の裏にある葛藤を、仮面やダンスなど多彩な演出で表現。
芹沢鴨を斬ったことにより生まれる土方の内面の変化を表現するため、田中さんは、怪しげな表情や笑い方など「(芹沢鴨役の)田淵さんを意識している部分がある」と話します。
オープニングや各話のエンディングのダンスでは、同じ曲を使用している部分でも、それぞれの心情の変化として微妙に少しずつ振付をかえているというのも細かなポイント。音楽は舞台『ハイキュー!!』やライブ・スペクタクル『NARUTO-ナルト-』でも活躍する和田俊介氏が手がけ、心に響くOP/EDがストーリーをさらに盛り上げる!
また、<宵ノ章>の沖田総司の話の座っているイントロダクション部分では、山南さんと恋人である“あかり”の位置が光縁寺にあるお墓と同じになっているのだとか! ※あかりは山南敬助の恋人といわれている明里(あけさと)という女性がモチーフ。
<宵ノ章>は、2人の複雑な内面を描く内容となっていますが、<暁ノ章>は、ガラッと変わり、とても明るいテイストになっているそう。両方を観ることでイメージがかなり変わりそうです。
苦労したという8面鏡のような演出や、ダンス、殺陣など動画でご覧ください! ※ネタバレ注意
https://www.youtube.com/watch?v=_4vBC4xJS9k[YouTube]
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沖田との番傘での殺陣シーンは、松田さんが小刀を忘れるミスをしてしまったため、急きょとられた演出。松田さんが「吉田稔麿がやると不思議と成立してしまうところが彼の魅力なんだと気づきました(笑)」と話したように、吉田稔麿なら刀以外もなんとなく使いこなしてしまう雰囲気をまとっています(笑)。
公演概要
BSP『新選組』
東京公演 2017年12月15日(金)―23日(土) あうるすぽっと
大阪公演 2018年1月20日(土)―29日(月) ナレッジシアター
【チケット】
S席7,000円 A席6,000円 学生シート 5,000円
http://www.blue-shuttle.com/bsp08/
脚本・演出 大塚雅史
音楽:和田俊輔
主題歌歌唱:新良エツ子
振付:藤川美伊菜
殺陣:ドヰタイジ
新選組の隊士たちの魅力
今なお、新たな作品として生まれ続ける『新選組』。最後の武士と言われる、彼らの魅力とは……。演じたキャストたちに、演じてみて感じた武士道を聞きました。
山本誠大:近藤勇さんは常に民の町の人のために、命を張って仕事をまっとうする、斬り合いをする。民を守るために動くというのが一番の動く源なので、無駄な斬り合いを嫌うんです。池田屋事件は、近藤さんがもっとも望んでいた戦い。民を守るために戦うのが彼の武士道。
田淵法明:芹沢鴨の武士道は貫くこと。それは<暁の章>を見ていただいたらわかるかなと思います。
田中尚輝:土方歳三は、<暁ノ章>と<宵ノ章>で気持ちもきっかけも違うんですけど、初めの気持ちは、「本当に強い男になりたい」という一心だった。自分の好きな仲間、そして新撰組ができて、そこからの武士道はやっぱり新撰組を守るもことに変わった。そのために局中法度を破ったものを罰したり、仲間を捨ててでも隊を、近藤さんを守る。単なる「強い男になりたい」から「新撰組を守りたい」と変化したのが、土方歳三の武士道かなと思います。
鐘ケ江洸:沖田総司を演じて考えたんですけど、やっぱり人を殺して自分が生きるということが武士道かなと感じました。カッコよくはなりたいけど、人を殺しているというのも忘れたくない。人を殺しているので、その人の分生きている。それが武士道かなと思いました。
土倉有貴:山南敬助の武士道は仲間を思う気持ちが一番でした。今回は、稽古を通しても、自分の役づくり=稽古場でみんなで過ごす時間が完全に一致していたので、それが強くなればなるほど、泣きそうになってきます(笑)。もうみんなが好きすぎて。愛です。武士とは愛。それは、みんなでワイワイしてめちゃくちゃ楽しい<暁の章>を観ればより感じられると思います。
松田岳:演出の大塚さんからおっしゃられたのは、吉田稔麿が新撰組の隊士と大きく違うのは、個人的な思いよりも、国を大きくすることにとても重きを置いていること。吉田松陰先生に育てられた我ら同士で長州のために動く。その気持ちと、今現在の僕のBSPに対する気持ちが重なります。長州を大きくしたい、という吉田稔麿と同じように、僕もBSPを大きくしたいという思いでやっています。「そのために自分が何ができるか」ということをひとつひとつ考え抜いてやりぬくことが、武士道になるのかなと感じています。