Otajo -オタ女-

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Nov 21 2024

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絵の教室と美少年と初恋 前編(犬山紙子のイラストエッセイ)

今日は友人・Oちゃんの、かわいい初恋の話をしまーす!

彼女、それはそれはかわいらしい、女なら胸がキュンとくるような初恋をしているのである。
この話を聞いたとき『耳をすませば』のしずくとせいじ君を思い出したほどである。
というわけで、Oちゃん版『耳をすませば』をご紹介。

Oちゃん高校2年生。
“将来は美大に行きたいなあ”となんとなく思いはじめていた彼女は、絵の教室に通うことにした。
でも、あんまり人がたくさんいる絵の予備校よりは、“こぢんまりとした、一人一人しっかり見てもらえるところに行こう”と考えて、とある小さな絵の教室へ見学に出向いた。


そこには、とてつもない美少年がいた…………!

真っ黒の学ランと対照的な真っ白の顔。
まつ毛が長く、鼻筋がすっと通っている。
黒目がちの大きな目は潤んでいるし、 唇が赤い。
絵に描いたような美少年絵を描いているのである。

私も写真をOちゃんに見せてもらったけど、とてつもなく美形だった。
“かっこいい”とか“かわいい”とかじゃなくて、“美形”ってほんとにいるもんだなあ、って感心したほどである。

そしてOちゃん、もちろん一目ぼれ。
絵の教室に通うタイプの女の子って美形好きだもんな……。
先生の指導がどうとかまったく関係なしに、ソッコーで通うことを決心したという。
入塾の手続きをしているときも、ずっと目はその美少年にクギづけ。
すると…………


一瞬目があった!!!!!!

しかし、すぐに目線をはずしてまたうつむきながら絵を描きはじめる美少年。
Oちゃんはその日、帰宅のバスの中、食事中、お風呂の中、ベッドの中……ずーーーーっと美少年のことで頭がいっぱい。
“耳にイヤホンしてたけど、どんな音楽を聴いてるんだろう”とか、“学ランの下にはどんなTシャツ着てるんだろう”とか、“靴はY’sのスニーカーっぽかったから、着るものとかにもこだわりがあるんだろうな”とか……

そんなこんなで絵の教室に通いはじめたOちゃん。
週2で彼に会える。

そこから2か月。
先生と美少年のやりとりから、“名前はH君”、“学年はOちゃんの1つ上の高校3年生”、“聴いてる音楽は多分クラシック”、“美大受験のためにここに通っている”というあたりまで判明したそうだ。

絵の教室に行けば行くほどH君が好きになってしまうOちゃん。
ある日、Oちゃんは…………

H君を絵の教室の前で待ち伏せすることにしたという。
早めに絵の教室に行き、人から見えないところでスタンバイ。
手には、一生懸命書いたラブレターを握りしめて…………。

「どんなラブレター書いたのよ?」
と聞いたら、
「あんまり覚えてないんだけど、“好き”とか“付き合ってください”とかは書けないから、自分の好きな音楽とか本とか。あと、“良かったら友だちになってください”とかそーいうのだったと思う」
とのこと。
高校生ならでは、である。
最初に渡す手紙に自分の好きな音楽とかそういうカルチャーっぽい話を書いちゃうのね。
わかるわかる。
これが男子だったら、自分の好きな曲のつめあわせをCD-Rとかに焼いて、で、1曲1曲解説文まで書いちゃうような、アレね。
わかるわあ~私もいまだにやっちゃうもんなあ~ “自分のカルチャー歴史語り”!

そして待つこと20分ほど。
そのあいだ、ずーっと心臓のドキドキがすごくて、今まで生きてたなかでいちばんドキドキしたらしい。

H君が自転車であらわれたっ!
すかさずH君の前に登場するOちゃん。


「あの…………これ良かったら読んでください!」
と手紙を手渡す!
手渡すついでに記念にと、手も触ったらしい。


H君も
「あ……ああ……ハイ」
と受け取ってくれた模様。

その日の絵の教室では、Oちゃんは緊張して何をやったかもう覚えていなかったと言う。
H君のほうも全然見られなかったらしい。
しかしよく考えてみたら、返事をどうやってもらうか全然考えてなかった。
まだ携帯を持っていなかったOちゃんは、連絡先なども手紙に書かなかったのだ。

そして、つぎの絵の教室の日。

各自の画材などを置いておく倉庫に、筆箱をそれぞれ置いているらしいんだけど、Oちゃんの筆箱になんとH君からの返事の手紙が入っていたのである!!!!!!
超ドキドキしながら手紙をあけると…………


「お手紙ありがとうございます。ちょっと戸惑っていますが、とりあえず文通をしてみませんか?」
と、きれいな字で短く書かれていたのだ。

こうして美少年H君とOちゃんの文通がスタートするのである…………。

つ・づ・く★

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犬山紙子

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